ことば

2017年11月 4日 (土)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「タコツル」を読んで その4

この章は、卑罵語が多くて面白い。
こういう機会でもなければ、こういう語彙は取り扱いにくいので。


ケンカが、口だけで終らなくなり、暴力が用いられると、更にいろんな表現に分かれる。
撲る、叩く、こづく、のほかに、
「どつく」
「どやす」
「しばく」
「はつる」
などとあるようである。(p.202)


「ぶつ」を使わない点では、私も同感である。
この中では、「はつる」は知らない。

私の内省では「なぐる」はグー、「たたく」はパー。
「こづく」は「たたく」よりは弱い。そして、チョキではなく、グーでもパーでも指先でもよく、肩やひじでもよい。

「どつく」は、「なぐる」よりは激しい。
「こづく」が「こ(指小辞)+突く」で、「どつく」が「ド+突く」と推測。[注1]

私の内省では、「どつく」は基本的にグーのみ。
殴る、蹴る、叩くが入り混じったのが「しばく」。「しばく」は、武器を使ってもかまわない。

だから、ボクシングなら「どついたろか」「どつきまわすぞ」が似合う。
もちろん、全ての選手がそうではないが。

「どついたろか」より「どつきまわしたろか」の方が、強めた表現。
「どついてくるりと一回転させることではない(p.203)」は的確な説明である。

「どつきまわすぞ」の方が、「どつきまわしたろか」よりは優しい。
男は実際にするかしないかは別にして、相手に何をしてんねんと伝えたい時にしばしば使う。

なお、「しばきまわす」は言えるが、「なぐりまわす」「たたきまわす」とは言えない。
「しばきまわすぞ」も、会話の中での軽いクッションとして使う。

「どやす」は、私の内省では殴る、叩くの意味合いはない。
口頭できつめに叱るが、しっくりくる。

本文にも「雷を落とす、こっぴどく叱られて油をしぼられる(p.204)」「課長にごっつう、どやされた(p.204)」が記されているが、私の内省ではこちらが一番目の意味になっている。

「はつる」は全く知らないので、引用に頼る。
私の脳内に存在しない語彙なので。


「はつる」もよく使うが、これはもとは皮をはぐことからきたらしく、上前をはねるとか、口銭をとる[注2]とか、という意味にも使う。そのせいでか、
「あたま、はつッたった」
というのは使うが、「尻をはつった」とはいわない。尻は「はたく」である。(p.205)


p.205で「いわす」が加えられる。「いわしたろか」は、必ずしも暴力ではない。
共通語だと、こらしめるが近いが、もう少しやっつける感が強い。




「なぐる」のアクセントは、HHH。
「たたく」は、HHH。「こづく」は、HHH。「ぶつ」は、LH。

「どつく」は、HHH。
「どついたろか」は、HHHHHL。
「どつきまわすぞ」は、HHHHHHL。
「どつきまわしたろか」は、HHHHHHHHL。

「しばく」は、HHH。
「しばきまわす」は、HHHHHH。

「どやす」は、HHH。
「どやされた」は、HHHLL。

「はつる」は推測だが、HHH.。
「はたく」は、HHH。

「いわす」は、HHH。
「いわしたろか」は、HHHHHL。




その5につづく。



[注1] 牧村史陽『大阪方言事典』では、「胴突く」説。

[注2] こうせん:仲介手数料




2017年10月23日 (月)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「タコツル」を読んで その3

接頭語には「ド……」をつけたらよいとすると、これに対応して接尾語には、
「くさる」
「さらす」
「けつかる」
「こます」
などというのがあり、すべて動詞活用形下につけて活用すると、怒罵とみに生彩を帯びて、輝やかしくなる。(p.199)

この章は、とにかく卑罵語が多くて、懐かしい。
方言の卑罵語は、その地域でしか使わないのが通常であろうから。

「くさる」の例文はないのだが、「~しくさって」が多いか。
共通語に訳すると「しやがって」だが、迫力がなくなる。

「やがる」は江戸っ子も使うが、大阪弁の「さらす」は一段と語意が強い(p.199)とのこと。
「何しやがる」よりは、「何さらすねん」の方が迫力があり(p.199)、間違いなくガラが悪い。

なお、「何さらすねん」は「何さらしとんねん」「何さらしてんねん」というように「~とる」「~ている」で言うこともできる。
「何しやがっている」は、私の内省ではありえない。

「けつかる」は「何ぬかしてけつかる」(p.199)が例示されている。
私はこの基本形を聞いたことがなく、「何ぬかしてけつかんねん」が最もなじむ。

古くは「けつかる」で、「けッかる」は近代風とのこと(p.200)。
ただ私は詰まって言わないので、「なンかッさらッけッかるねン!」(p。200)を聞いてもすぐには理解できない。

この例では、「さらす+けつかる」の構造になっている。
「何しくさってけつかんねん」のように「くさる+けつかる」は言えるが、「こます+けつかる」は無理。

「こます」は自分のことをいうとある(p.200)が、違和感がある。
「いうてこましたった」(p.200)は私は知らない。

「こます」で思い浮かぶのは、「いてこます」で、おそらく「いうてこます」の縮約形だろう。
共通語に訳すると、「やってしまうぞ」なんだが、やはり迫力がない。


「くさる」のアクセントは、HHH。
「しくさって」は、HHHHH。

「さらす」は、HHH。
「さらすねん」は、HHHLL。
「さらしてんねん」は、HHHHHLL。

「けつかる」は、HLLL。
「けつかんねん」は、HLLLLL。

「こます」は、HHH。
「いてこます」は、HHHHH。


その4につづく。




2017年10月 4日 (水)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「タコツル」を読んで その2

その他の「ド+」をみてみたい。
ド美人、ドイケメンというように、基本的にプラスな語彙にはつかない。

だからといって、ドデブ、ドブタ、ドチビ、ドノッポ、ドハゲは言わない。
クソデブ、クソブタ、クソチビ、クソノッポ、クソハゲなら言えるのだが。

「ド根性」は、我々世代では『ド根性ガエル』で有名だが、ド根性はもとは大阪弁。
近松門左衛門が使っていたことからもうかがえる。

「ドツボ」は「土壺」ではなく、「ド+つぼだと私は思っている。
ここでの壺は容器ではなく、滝つぼの「つぼ」のようにくぼんだところ。

ドツボは肥溜。ドツボにはまるは、肥溜に落ちるぐらいひどいことになるということ。
だから、ツボにドがついて罵言にしたのだと思っている。

「どつく」の「ど」も「ド」ではなかろうかという気がする。
「奴を突く」で「どつく」というのは、こじつけ感がある。

最下位をあらわす「どべ」の「ど」は「ド」であろう。
ベベ系語彙の「べ」に「ド」がついた形。

私はベベよりベッタがなじむ。ベベタは、なんか泥臭い。
人によっては「どんべ」とも。なんか泥臭い。

「どんくさい」は「ド+くさい」としたいところだが、「く」の前で「どん」となる音韻論的根拠が乏しい。
「鈍臭い」と表記するのは違和感があるが、これは「ド」ではないのかも。

「どぐされ」というのが、ふと頭に浮かんだ。
90年代半ばのフジテレビの深夜番組で、子供向けヒーローの主題歌なのに「♪どぐされげどーを たおすため」みたいな歌詞だったのを思い出した。

ただ、これは大阪弁ぽくはない。『どぐされ球団』の作者は長崎出身。
『リーガルハイ』の古美門研介は鹿児島出身。だから、九州方言だと推測。

最後に、今さらながら「超ド級」の「ド」は卑罵語ではなく、ドレッドノートをあらわす「弩」。



「ド美人」のアクセントは、、LHLL。「美人」は、HHH。
「ドイケメン」は、LHLLL。「イケメン」はLLHH。

以降、言わない語彙は割愛。


「デブ」は、LH。「クソデブ」は、HHHH。
「ブタ」は、LH。「クソブタ」は、HHHH。
「チビ」は、LH。「クソチビ」は、HHHH。
「ノッポ」は、HLL。「クソノッポ」は、HHHLL。
「ハゲ」は、LH。「クソハゲ」は、HHHH。

「ド根性」は、LHLLL。「根性」は、LHLL。

「ドツボ」は、LHL。「つぼ」は、HH。

「どつく」は、HHH。「突く」は、LH。

「どべ」は、LH。「どんべ」は、LHL。
「ベッタ」は、LLH。「ベベ」は、LH。「ベベタ」は、LHL。

「どんくさい」は、HHHLL。「くさい」は、HLL。

「どくされ」は、LLLH。

「超弩級」は、HHHLL。

それから「ド阪神(p.198)」は、LHLLL。「ドタヌキ(p.198)」は、LHLL。

「ド+」のアクセントは、低起式で語頭から2拍目の後ろに下がり目だが、例外は多い。
「クソ+」のアクセントは、高起式で後項の下がり目から下がる。


その3につづく。



『大阪弁ちゃらんぽらん』「タコツル」を読んで その1

「タコツル」pp.197-208

ドあほ、ド畜生、ド餓鬼、ド嬶、ド盗人、ドタフク、ドタマ、ド助平… (pp.197-198)

ドをつけられる言葉に世代差あるいは個人差がある。
この中でも使うものとそうでないものが。

ドあほは使う。ド馬鹿は言わない。ドボケも言わない。
クソバカ、クソボケとは言えるが、クソアホは言えない。

なお、アホは坂田利夫さんと藤山寛美さん。
ドあほうは、初代桂春団治さんと藤村甲子園。

ド畜生は使ったことがない。これは言ってもおかしく感じない表現。
畜生よりひどい奴と出会ってないからか。

ド餓鬼も使わない。
クソガキよりかわいげのない奴がいれば使うかもしれないが、「ドガ」という濁音連続が気になる。

ド嬶(かか)も使わない。ド父もド母もド兄もド姉も言えない。
クソジジイ、クソババアは言えるが、クソトーチャンには違和感がある。

ド盗人も使わない。ド泥棒よりは、ド盗人か。面白い。
三億円事件の犯人が該当するのか、あるいは強盗殺人事件の犯人か。

いずれにせよ、そんな可愛げのあるものではない。
会社や店や家の金をくすねてとんだ奴が、ド盗人のレベルか。

ドタフクは、お多福顔をより罵った表現。この本を読んで覚えた。
おたふくを美人と捉えるか、ブスと捉えるかには個人差がある。

私は、おたふくを罵詈雑言に使えないので、ブサイコかブス。
ドをつけるなら、ドブス。クソブスは微妙。最近は使う相手がいない。

ドタマは、ド+アタマの縮約形。理解はできるが、使う機会はかなり少ない。
「ドタマかちわったろか」といった用例がある。「ドタマ悪いんか」は、内省では微妙。

ド助平は、ドスケベーではなく、ドスケベ。私は末尾は伸ばさない。
ええ歳こいた大人が、そういう話で盛り上がる機会はほとんどなくなった。

だから、誰がドスケベなのか、分かりにくくなっている。
ドスケベは行動規制ができていれば、知識人と言えるんだが。



「タコツル」のアクセントは、まだ語構成が分からないので、保留。

「ドアホ」は、HLL。
「アホ」は、LH。「バカ」は、HL。「ボケ」は、LH。(お笑いのボケはHL)
「クソバカ」は、LLHL。「クソボケ」は、LLLH。
「どあほう」は、LLHH~HLLL。

「ド畜生」は、LHLLL。「チクショー」は、LHLL

「ド餓鬼」は、LLH。
「ガキ」は、LH。「クソガキ」は、LLLH。

「ド嬶」は、LLHL。「かかあ」は、LHL。
「クソジジー」は、HHHHL。「じじい」は、LHL。
「クソババー」は、HHHHL。「ばばあ」は、LHL。

「ド盗人」は、LLHLL~LLHHL。
「ぬすっと」は、HHLL~HHHL。「どろぼう」は、HHHH。

「ドタフク」は、LHLL。「オタフク」は、LHLL。
「ブサイコ」は、HLLL。「ブス」は、LH。「ドブス」は、LLH。

「ドタマ」は、LHL。「アタマ」は、LHL。

「ドスケベ」は、LLHL。「スケベ」は、LHL。




その2につづく




2017年9月 2日 (土)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ウダウダ」を読んで その4

「そんな殺生な……」(p.191)
私にとっては、時代がかった表現である。

仏教用語の「生き物を殺す」から転じて、「残酷な、かわいそうな、むごい、ひどい」、さらに転じて大阪弁で「ワヤクチャ、理不尽な、あんまりといえばあんまりな」(p.191)

値切り倒して、商売人に「そんな殺生な」(p.192)
このあたりが私にとっては一昔感になるんだろう。

「セッショウ」は「セッショ」(p.191)という縮約形がある。
耳にしたことはある。

一方で、「意地わる、むごたらしい、ひどい」という意味の毒性は使わない。
これも「ドクショ」(p.191)となるらしいんだが、耳にしたことがない。


そら殺生やで、というのが、圧迫者に対する被圧迫者の抗議であるとすれば、第三者に向かっての客観的報告は、「往生しました」になる。(p.193)


人が亡くなった時に、往生したというのも、最近は使っていない。
あくまで私がという話。

一方で、立ち往生はたまに使ってる気がする。
山手線がちょっと止まったぐらいでは使わないが、特急で1時間以上なら使う。


「閉口する、困る」という意味では、大木こだまさんの「往生しまっせ」がすぐに浮かぶ。
「リンダ、困っちゃう」が「往生しまっせ」なら、腹を抱えて笑いそう。

「××もとうとう、銀行にソッポをむかれて往生した」(p.194)
終わったなあという感じで、死ぬの派生で伝わってくる。

女をくどいて、「ええかげんに往生しいな」(p.194)
覚悟せえやという意味だろうが、こちらは伝わってきにくいなあ。


「往生する、にはあきらめるというようなニュアンスもある。しかし、真実、うんざりした、というようなときには、うとてもうたといいますなあ」(p.195)


共通語での歌っては、大阪弁では「うとうて」。それの縮約形が「うとて」。
「悲鳴をあげる、降参、音をあげる」(p.195)という意味で使われる。

倒産の際には、往生したよりうとてしもたの方が緊迫感がある(p.195)とのこと。
このあたりのニュアンスも私には伝わってこない。

天寿を全うしたら「往生した」、自殺者は人生に「うとてしもた」。
この例でようやく理解できた気がする。



「せっしょう」のアクセントは、HLLL~HHLL。
「せっしょ」は、HLL~HHL。

「どくしょう」は内省がきかないんだが、LLLHか?
だから、「どくしょ」はLLH。

「往生」は、HLLL。
「往生した」は、HLLLHL。
「立ち往生」は、LLHLLL。

「うとて」は、HHH。
「うとてもうた」は、HHHHLL。
「うとてしもた」は、HHHHLL。


この章終わり。






2017年8月 5日 (土)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ウダウダ」を読んで その3

「すっかり」に似ている「すっくり」があるという。
「すっかり」より意味が強く、あらいざらい、根こそぎのような意味(p.189)があるらしい。

らしいと書いてる時点で言うまでもないが、使用語彙ではない。
理解できるかどうかは、以下の会話の引用で考えてみる。


京は三条の鴨川のお茶屋(中略)おかみさんが河原を見たら
「目ェの下にアベックがいやはって」
愛の行為をやったはるのが、
「すっくり、見えましたわ」(p.189)


頭にはてながとびかっている。
この「すっくり」は思わず「ホンマに大阪弁か」て聞いてしまうかもしれない。

なまじ共通語にもありそうな語形なんで、余計に。
一部始終という意味になるんだが、ここで「すっかり」があわないのは分かる。

「すっかり忘れていた」はOKだが、「すっくり忘れていた」はNG(p.189)。
こういう内省を示されると、この2つの語の用法が違うことが分かる。

「すっくり忘れた」ではなく、「ころッと忘れた(p.189)」。
これはさすがに私の世代でも使うし、もはや共通語ではないかと思う。

盗まれるときは「ころっと盗まれた」では、可愛すぎて使えない。
こういう時は「ごそっと盗まれた(p.190)」があう。

いずれも「根こそぎ」なのかもしれないが、「全部」だと範囲が広すぎる。
「全部」の多義性を分解する必要がある。

一部始終見えた ○すっくり ?すっかり
これは内省がきかないのだが、時間をふまえた全体ということか。

覚えておくべきことをを忘れた  ○ころっと ○すっかり ×すっくり
「すっかり忘れた」だが、私の内省だと「ころっと忘れてた」「ころっと忘れてしもた」で単純なタ形は無理。

根こそぎ盗まれた ○ごそっと ?ころっと ×すっかり、すっくり
金庫の中の金を自分で使い切ったら「すっかり」、全部盗まれたら「ごそっと」。

「ごそっと盗まれた」は、実際に大金を盗まれた時が基本だろう。
大した金もないのに「ごそっと」は見栄を張っているだけである。



「すっくり」のアクセントは、LLHL。
「すっかり」がLLHLなので、これと同じだと類推。

「ころっと」はHLLL。
「ごそっと」はLHLLあるいはLHHL。



その4につづく。




2017年7月 8日 (土)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ウダウダ」を読んで その2

「ゴネる」は使うが、「ゴテる」は使わない。
「ゴネる」より「ゴテる」の方が、勢いが強いような気がする。

そう感じるのは、「ネ」と「テ」の違いか。
鼻音の方が無声破裂音よりは、柔らかく聞こえるからである。


「オイオイ。おっさん。今、何いうてん。ワイの聞きまちがいかも知らんけどな、もういっぺんぬかしてみい」(p.186)


これは「ゴネる」より「ゴテる」の方が、確かにしっくりする。
「ゴネる」ほどの愛嬌はない。ただ、凄む(p.186)の方がもっとしっくりする。

また、これは大阪人の方がしっくりくる。
気が短い東京人だと、ゴテてる感じはしない。

「ゴテる」を使わないから、「ゴテセイ」(p.186)はよく分からない。
ゴテる人のことをさすんだろうか。


「ゴテる」は、対する人にそれ相応の警戒心と緊張を要求する状態だが、「ウダウダ」は物の数にも入れてもらえぬ状態である。(p.188)


しっくりする説明である。ただし、その1でも書いたように「ウダウダ」は計算して使える言い方である。
その絶妙な用例をちょっと長くなるが、以下に引用する。(熊:熊八中年、聖:田辺聖子)


熊:「浮気した男が、必死に言いつくろって、アリバイを主張したり、潔白をいいたてたりする、すると女房がせせら笑うて『何をウダウダいうてるんです! 証拠はあがっているんですよ。』こういうところにも使いますなあ」
聖:「なるほど適切な用法ですね」
熊:「あれはやはり、ウダウダいうてるほうが勝ちです。女は、白黒をつけるのが好きですが、あんなん、ホンマのこと白状するもんコドモ。オトナはウダウダ弁解し、いつのまにやら、立ち消えするもんです」
聖:「しかし、おくさんは承知しないでしょう」
熊「女は『すっかり白状しなさい、みとめなさい!』てんで、たけり狂いますが、これは絶対にウダウダに限る。すっくり話すとどうなるか」
聖:「どうなりますか」
熊:「よけい、とりみだす」


おあとがよろしいようで。


「ゴテる」「ゴネる」のアクセントは、LLH。

「ぬかす」は、HHH。「ぬかして」は、HHHH。
ここでの「ぬかす」は「言う」の意味。基本的に自身にではなく、相手を罵倒する時に使う。

「ゴテセイ」は???なんだが、LLLH。

「白黒」は、LHLL。
「たけり狂う」は、HHHHHH。

「すっくり」は、LLHL。



その3につづく。





2017年6月19日 (月)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ウダウダ」を読んで その1

「ウダウダ」pp.184-196

「ウダウダいうとる」(p.184)
「ウダウダいいなはんな」(p.185)

くどくどほど、何度も繰り返されるくどさはない。
また、くどくどはなんやかんや言ってる内容は明白である。

ぶつくさほど、文句をつぶやいているわけでもない。
ごちゃごちゃやごじゃごじゃほど、明白な文句を怒鳴ってるわけでもない。

気が強いかどうかは問わないが、なんか言うてる感じ。
でも、もごもごよりは聞き取りやすい。

それを言うんやったら、言わん方がましって感じ。
もごもごよりはましだが、なまじ聞こえる分、喋んなって言いたくなる。

しょうもない話より、もっとどうにもならない感じ。
少なくとも笑いのセンスは全く感じられない話し方。

なんかよう分からん、とりとめのつかんことを終わりが見えずに喋ってる感じ。
それが私にとっての「ウダウダ」の印象。

今は、「ウダウダ」よりは「ぐだぐだ」の方が使われている気がする。
ただ、ウダウダの方が不透明感がある。

ぐだぐだは頑張っても無理な感じがするが、ウダウダはある種計算でもできる。
意図的にこの話をうやむやにしたい時には、ウダウダ喋るのはちょうどいい。

相手が怒ったとしても、やがて呆れて、それ以上の相手をしなくなる。
そうなれば、ある意味しめしめというものである。

また、当人にとってはちゃんとしたことを言ってるつもりであっても、聞き手にとってよう分からんことを喋っていると、ウダウダが使える。

「婦人週間ちゅうのは何やねん、あれ。何やしらんオナゴが集まってウダウダいいうとるだけのこっちゃないか」(p.187)

政治家の発言は、結構な人がウダウダ言うとると思ってるかもしれない。



「ウダウダ」のアクセントは、HLLL。

「くどくど」は、HLLL。
「ぶつくさ」「ごちゃごちゃ」「ごじゃごじゃ」「もごもご」も全てHLLL。

「ぐだぐだ」は「ぐだぐだ言う」であれば、HLLL。
ただし、単独で名詞として使う場合は、LLLH。
これは「ウダウダ」でも言えるが、他の例ではこの用法はない。



その2につづく。





2017年6月 5日 (月)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ぼろくち」を読んで その4

一獲千金を夢見てもしょうがない。
宝くじは買わなければ当たらないが、買わなければ損はしない。

となると、いきなり金持ちになれるわけではないので、働くしかない。
そしてある程度は貯めざるを得ない。

さて、ケチとしぶちん。
この違いについて、少し考えてみる。


「ケチとしぶちんは違う。節倹に励んで金をためるのがケチで、倹約してためた金をぱっと使うのが、しぶちん」(p.182)
「ちょっと見は同じに見えますがね、たとえばトイレのおとし紙に新聞紙をちぎり、茶の代りに白湯を呑み、腹の減るのを用心して大きな声でものいわず、靴のいたむのを恐れて、人の見ぬ所ではハダシで歩く、こういう所までは同じであるが、そうやって金をためてじっと抱いてにんまりしてるのがケチ、そいつをぱーっと散財して次なるボロクチにそなえるのがしぶちん」(pp.182-183)


この記述が私の内省とは全く異なるのである。
節倹してためるところまでは両者は同じである。

ケチは金を出す場にできるだけあらわれない。
とにかく金を使うことを嫌がる。

しぶちんは金を出す場にはあらわれるが、支払いを逃げようとする。
払うには払うが、できるだけ払いたくない人を指す。

そもそも「渋い」んだから、気前がいいはずはないと思うのだが。
例えを変えれば、ブラック企業はそもそもしぶちんである。

だから、ぱーっと使う人がしぶちんというのは、???である。
今と昔で全く逆の方向に意味が変化したというのだろうか。




「ケチ」のアクセントは、LH。
「しぶちん」は、LLHH。


この章終わり。






2017年5月18日 (木)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ぼろくち」を読んで その3

襤褸(ぼろ、らんる)は古びた布きれを指す。
「ぼろい」は「襤褸」の形容詞化だろう。

あるいは、形容詞の語幹用法か?
これは古典文献をちゃんと読んで用例を調べないと、言い切れない。

それはひとまずおいといて、「ぼろくち」は派生語だろう。
ただ、先に「ぼろもうけ」があるように思える。

「ぼろもうけ」+「もうけぐち」、あるいは「ぼろいもうけぐち」の縮約だろうか。
意味の派生については、以下の考察が興味深い。


「使ひ古した役に立たぬ衣服や布きれをボロ(襤褸)といひ、その破れたさまをボロボロといふが、さうした役に立たぬやうなものを高価に売り込むところから、”ぼろい儲け”などといふ語が生じたのではあるまいか」(p.180『大阪方言辞典』より)


まんざら外れた考察ではないと思う。
例えば、大辞林第3版で「ぼろい」については

①元手や労力をあまり使わずに大きな利益があがる。非常に割がよい。 「 - ・い儲もうけ」
②俗に、古くて壊れかけているさまをいう語。 「 - ・いビル」

とあるが、これは②が先で、①が派生だと思うのだが。
「ぼろ」から派生した「ぼろぼろ」は②の意味でしかないわけだし。

さて、語源は仮にそうであったとしても、現実には「すごい」「おいしい」「やばい」に置換されて使えると思われる。
なので、「ぼろ」は接頭辞化しており、後項を強調する用法となっている気がする。

「ボロ勝ち」(p.180)は、これに該当すると思う。
一方で、「ボロ買い」(p.181)は「大量買い」なら前者だが、「安物買い」なら元の意味を維持していると解釈できる。


「安物買いの銭失い、安物買いの鼻落とし」(p.181)


田辺聖子さんは、前者は意義分明、後者は因果関係が分からないとのこと。同感である。
鼻が落ちるの代表的なのは梅毒だが、今では薬のおかげでそこまではいかないようだし。



「ぼろ」のアクセントは、LH。
「ぼろい」は、HLL。

「ぼろもうけ」は、LLLLH。
「もうけぐち」は、HHHLL。

「ボロ勝ち」は、LLLH。「勝つ」は、LH。
「ボロ買い」は、LLLH。「買う」は、HH。

「安物買い」は、LLLLLLH。「やすもの」はLLLH。
「銭失い」は、LLHLLL。「ぜに」は、LH。「失う」は、HHHH。
「鼻落とし」は、HHHLL。「鼻」は、HH。「落とす」は、HHH。


その4につづく。




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