ことば

2017年8月 5日 (土)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ウダウダ」を読んで その3

「すっかり」に似ている「すっくり」があるという。
「すっかり」より意味が強く、あらいざらい、根こそぎのような意味(p.189)があるらしい。

らしいと書いてる時点で言うまでもないが、使用語彙ではない。
理解できるかどうかは、以下の会話の引用で考えてみる。


京は三条の鴨川のお茶屋(中略)おかみさんが河原を見たら
「目ェの下にアベックがいやはって」
愛の行為をやったはるのが、
「すっくり、見えましたわ」(p.189)


頭にはてながとびかっている。
この「すっくり」は思わず「ホンマに大阪弁か」て聞いてしまうかもしれない。

なまじ共通語にもありそうな語形なんで、余計に。
一部始終という意味になるんだが、ここで「すっかり」があわないのは分かる。

「すっかり忘れていた」はOKだが、「すっくり忘れていた」はNG(p.189)。
こういう内省を示されると、この2つの語の用法が違うことが分かる。

「すっくり忘れた」ではなく、「ころッと忘れた(p.189)」。
これはさすがに私の世代でも使うし、もはや共通語ではないかと思う。

盗まれるときは「ころっと盗まれた」では、可愛すぎて使えない。
こういう時は「ごそっと盗まれた(p.190)」があう。

いずれも「根こそぎ」なのかもしれないが、「全部」だと範囲が広すぎる。
「全部」の多義性を分解する必要がある。

一部始終見えた ○すっくり ?すっかり
これは内省がきかないのだが、時間をふまえた全体ということか。

覚えておくべきことをを忘れた  ○ころっと ○すっかり ×すっくり
「すっかり忘れた」だが、私の内省だと「ころっと忘れてた」「ころっと忘れてしもた」で単純なタ形は無理。

根こそぎ盗まれた ○ごそっと ?ころっと ×すっかり、すっくり
金庫の中の金を自分で使い切ったら「すっかり」、全部盗まれたら「ごそっと」。

「ごそっと盗まれた」は、実際に大金を盗まれた時が基本だろう。
大した金もないのに「ごそっと」は見栄を張っているだけである。



「すっくり」のアクセントは、LLHL。
「すっかり」がLLHLなので、これと同じだと類推。

「ころっと」はHLLL。
「ごそっと」はLHLLあるいはLHHL。



その4につづく。




2017年7月 8日 (土)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ウダウダ」を読んで その2

「ゴネる」は使うが、「ゴテる」は使わない。
「ゴネる」より「ゴテる」の方が、勢いが強いような気がする。

そう感じるのは、「ネ」と「テ」の違いか。
鼻音の方が無声破裂音よりは、柔らかく聞こえるからである。


「オイオイ。おっさん。今、何いうてん。ワイの聞きまちがいかも知らんけどな、もういっぺんぬかしてみい」(p.186)


これは「ゴネる」より「ゴテる」の方が、確かにしっくりする。
「ゴネる」ほどの愛嬌はない。ただ、凄む(p.186)の方がもっとしっくりする。

また、これは大阪人の方がしっくりくる。
気が短い東京人だと、ゴテてる感じはしない。

「ゴテる」を使わないから、「ゴテセイ」(p.186)はよく分からない。
ゴテる人のことをさすんだろうか。


「ゴテる」は、対する人にそれ相応の警戒心と緊張を要求する状態だが、「ウダウダ」は物の数にも入れてもらえぬ状態である。(p.188)


しっくりする説明である。ただし、その1でも書いたように「ウダウダ」は計算して使える言い方である。
その絶妙な用例をちょっと長くなるが、以下に引用する。(熊:熊八中年、聖:田辺聖子)


熊:「浮気した男が、必死に言いつくろって、アリバイを主張したり、潔白をいいたてたりする、すると女房がせせら笑うて『何をウダウダいうてるんです! 証拠はあがっているんですよ。』こういうところにも使いますなあ」
聖:「なるほど適切な用法ですね」
熊:「あれはやはり、ウダウダいうてるほうが勝ちです。女は、白黒をつけるのが好きですが、あんなん、ホンマのこと白状するもんコドモ。オトナはウダウダ弁解し、いつのまにやら、立ち消えするもんです」
聖:「しかし、おくさんは承知しないでしょう」
熊「女は『すっかり白状しなさい、みとめなさい!』てんで、たけり狂いますが、これは絶対にウダウダに限る。すっくり話すとどうなるか」
聖:「どうなりますか」
熊:「よけい、とりみだす」


おあとがよろしいようで。


「ゴテる」「ゴネる」のアクセントは、LLH。

「ぬかす」は、HHH。「ぬかして」は、HHHH。
ここでの「ぬかす」は「言う」の意味。基本的に自身にではなく、相手を罵倒する時に使う。

「ゴテセイ」は???なんだが、LLLH。

「白黒」は、LHLL。
「たけり狂う」は、HHHHHH。

「すっくり」は、LLHL。



その3につづく。





2017年6月19日 (月)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ウダウダ」を読んで その1

「ウダウダ」pp.184-196

「ウダウダいうとる」(p.184)
「ウダウダいいなはんな」(p.185)

くどくどほど、何度も繰り返されるくどさはない。
また、くどくどはなんやかんや言ってる内容は明白である。

ぶつくさほど、文句をつぶやいているわけでもない。
ごちゃごちゃやごじゃごじゃほど、明白な文句を怒鳴ってるわけでもない。

気が強いかどうかは問わないが、なんか言うてる感じ。
でも、もごもごよりは聞き取りやすい。

それを言うんやったら、言わん方がましって感じ。
もごもごよりはましだが、なまじ聞こえる分、喋んなって言いたくなる。

しょうもない話より、もっとどうにもならない感じ。
少なくとも笑いのセンスは全く感じられない話し方。

なんかよう分からん、とりとめのつかんことを終わりが見えずに喋ってる感じ。
それが私にとっての「ウダウダ」の印象。

今は、「ウダウダ」よりは「ぐだぐだ」の方が使われている気がする。
ただ、ウダウダの方が不透明感がある。

ぐだぐだは頑張っても無理な感じがするが、ウダウダはある種計算でもできる。
意図的にこの話をうやむやにしたい時には、ウダウダ喋るのはちょうどいい。

相手が怒ったとしても、やがて呆れて、それ以上の相手をしなくなる。
そうなれば、ある意味しめしめというものである。

また、当人にとってはちゃんとしたことを言ってるつもりであっても、聞き手にとってよう分からんことを喋っていると、ウダウダが使える。

「婦人週間ちゅうのは何やねん、あれ。何やしらんオナゴが集まってウダウダいいうとるだけのこっちゃないか」(p.187)

政治家の発言は、結構な人がウダウダ言うとると思ってるかもしれない。



「ウダウダ」のアクセントは、HLLL。

「くどくど」は、HLLL。
「ぶつくさ」「ごちゃごちゃ」「ごじゃごじゃ」「もごもご」も全てHLLL。

「ぐだぐだ」は「ぐだぐだ言う」であれば、HLLL。
ただし、単独で名詞として使う場合は、LLLH。
これは「ウダウダ」でも言えるが、他の例ではこの用法はない。



その2につづく。





2017年5月18日 (木)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ぼろくち」を読んで その3

襤褸(ぼろ、らんる)は古びた布きれを指す。
「ぼろい」は「襤褸」の形容詞化だろう。

あるいは、形容詞の語幹用法か?
これは古典文献をちゃんと読んで用例を調べないと、言い切れない。

それはひとまずおいといて、「ぼろくち」は派生語だろう。
ただ、先に「ぼろもうけ」があるように思える。

「ぼろもうけ」+「もうけぐち」、あるいは「ぼろいもうけぐち」の縮約だろうか。
意味の派生については、以下の考察が興味深い。


「使ひ古した役に立たぬ衣服や布きれをボロ(襤褸)といひ、その破れたさまをボロボロといふが、さうした役に立たぬやうなものを高価に売り込むところから、”ぼろい儲け”などといふ語が生じたのではあるまいか」(p.180『大阪方言辞典』より)


まんざら外れた考察ではないと思う。
例えば、大辞林第3版で「ぼろい」については

①元手や労力をあまり使わずに大きな利益があがる。非常に割がよい。 「 - ・い儲もうけ」
②俗に、古くて壊れかけているさまをいう語。 「 - ・いビル」

とあるが、これは②が先で、①が派生だと思うのだが。
「ぼろ」から派生した「ぼろぼろ」は②の意味でしかないわけだし。

さて、語源は仮にそうであったとしても、現実には「すごい」「おいしい」「やばい」に置換されて使えると思われる。
なので、「ぼろ」は接頭辞化しており、後項を強調する用法となっている気がする。

「ボロ勝ち」(p.180)は、これに該当すると思う。
一方で、「ボロ買い」(p.181)は「大量買い」なら前者だが、「安物買い」なら元の意味を維持していると解釈できる。


「安物買いの銭失い、安物買いの鼻落とし」(p.181)


田辺聖子さんは、前者は意義分明、後者は因果関係が分からないとのこと。同感である。
鼻が落ちるの代表的なのは梅毒だが、今では薬のおかげでそこまではいかないようだし。



「ぼろ」のアクセントは、LH。
「ぼろい」は、HLL。

「ぼろもうけ」は、LLLLH。
「もうけぐち」は、HHHLL。

「ボロ勝ち」は、LLLH。「勝つ」は、LH。
「ボロ買い」は、LLLH。「買う」は、HH。

「安物買い」は、LLLLLLH。「やすもの」はLLLH。
「銭失い」は、LLHLLL。「ぜに」は、LH。「失う」は、HHHH。
「鼻落とし」は、HHHLL。「鼻」は、HH。「落とす」は、HHH。


その4につづく。




2017年5月 3日 (水)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ぼろくち」を読んで その2

「金はなくとも夢はある」は旧制高校の寮歌(p.177)のような過去の遺物なのか。
そうではないだろう。食う金に困るといった切実なのは減ってるだろうが、金がないのは一定数いる。

大学に行くのに大変な思いをしてる学生はそれなりにいる。
国立大の授業料をあげるなんてのは暴挙なのだが、裕福に育ってきた政治家には理解できない世界であろう。


「もうかりまっか」と挨拶するのが若者であれば、それは必至切実の思いを揶揄の口調でごまかしているのであり、中年者が挨拶したとすれば、あきらめ半分の揶揄を、わざと切実そうにひびかせていってるのである。(p.178)


大阪に住んでないから、ほんまに学生が言うのかは分からない。
少なくとも私なら冗談でしか言えない。

冗談ならば「もうかってもうかって、しょうまへん」(p.178)という返答は理解できる。
儲かってない奴ほど、こう言いたくなるのは分からなくもない。

「あきまへん、何ぞ、ボロクチおまへんか」(p.178)
ようやく本題となる「ぼろくち」が登場。ぼろいもうけ口を意味するそうだ。

そうか。「ぼろもうけ」は知ってたが、ぼろ儲けするための前段階がぼろくちなのか。
私もあやかりたいが、どのみち商売に向かない人間なんで無駄になるに違いない。


これは便利なことばで、長尻の客にじれじれしているとき、電話がかかる、これ幸いと、
「すんまへん、ぼろくち、ぼろくち」
と席をたってしまう。客も仕方ないから、
「では、これで失礼します。せいぜい儲けとくんなはれ」
と帰らなければ仕方ない。(p.179)


この会話、ええなあ。
使えるもんなら使ってみたいが、事前にこの語を流布させないと。




「ぼろくち」のアクセントは、HHHH。
「ぼろもうけ」は、LLLLH。

「もうかりまっか」は、HHHHHHH。
「もうかって」は、HHHLL。
「しょうまへん」は、HHHLL。「しょうおまへん」なら、HHHHLL。

「すんまへん」は、HHHHH。



その3につづく。





2017年4月30日 (日)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ぼろくち」を読んで その1

「ぼろくち」pp.173-183

「こんにちは」が正しい表記とされているが、これが好きじゃない。
私の中では「こんにちわ」の方が、すっきりする。

助詞の「は」については多少は仕方ないと思うが、「こんにちは」「こんばんは」は「は」である必要を感じない。
既に挨拶ことばとして一単語なのだから、助詞の「は」とは異なる扱いで「わ」にした方がいい。

さて、大阪弁でのあいさつで誇張された表現として、「もうかりまっか」がある。
商人との付き合いがないので、ギャグじゃなく使ってるのをいまだに聞いたことがない。

「もうかりまっか」に対して「ぼちぼちでんな」はかなり儲かってる奴が言うらしい(pp.174-175)。
他のは以下の通り(p.175)。


「トントンいうとこですわ」:収支相つぐなうが如く、いい恰好するのは、ちょっと儲けてる奴。
「ま、泣き泣きですなあ」:まずまず儲けてる。
「あきまへん」:ほんとうに儲けてない奴が血を吐く一語を口走る。


この区別があるということは、この表現は都市伝説ではないということか。
なお、「もうかってます」という阿呆はおらん(p.174)ようだ。

中島らも氏が「マスコミに描かれる関西人は、ヤクザ、アキンド、ヨシモトの三つの人種のみ」と記したことがある。 『西方冗土』(1994)
言い得て妙である。他に「オバハン」がいる。「ヤンキー」は廃れたか。

鷲谷樗風(わしたに ちょふう)氏は、明治28年ごろに書かれた「大阪にないもの一覧表」を引用されている。 『大阪春秋』3号(1974)
以下に引用する。(引用先は『大阪弁ちゃらんぽらん』pp.175-176)


1.華族  2.大臣  3.博士  4.ガス燈  5.二頭馬車
6.図書館  7.眼鏡橋  8.洋装美人  9.先曳の車
10.洋食宴会  11.鉄道馬車  12.一現の客
13.車上読書  14.横綱力士  15.馬車令嬢
16.板葺屋根  17.新聞号外  18.東照権現


さすがに時代が違いすぎる。そもそも今はないものは当然ない。
東照権現崇拝は、太閤ファンに袋叩きにあうだろう。

博士は近年増えているだろう。そして、図書館で勉強する人もたくさんいるだろう。
総理大臣は、戦後に幣原喜重郎(しではら きじゅうろう)氏が1945~1946年に。

華族は、1911(明治44)年に鴻池善右衛門(こうのいけ ぜんえもん)氏と住友友純(すみとも ともいと)氏が、1920(大正9)年に幣原喜重郎(しではら きじゅうろう)氏と松井慶四郎(まつい けいしろう)が叙爵している。

横綱は戦前に大錦卯一郎(おおにしき ういちろう)が1917年に第26代横綱に。
洋装美人は山ほどいるし、日夜洋食宴会は開かれているだろう。

1895(明治28)年になかったものが、やがてあるように。
これは新聞の号外でも出して、当時の方々にお知らせしないと。



<付記>
なお、新聞号外は、日清戦争(1894(明治27)-1895)や日露戦争(1904(明治37)-1905)において報道合戦が行なわれ、大阪毎日新聞も発行している。
ガス燈は、1871(明治4)年に大阪の造幣局で灯されている。


「ぼろくち」のアクセントは、HHHH。
「こんにちわ」は、LLLLH。
「もうかりまっか」は、HHHHHHH。

「ぼちぼち」は、LLHL。「ぼちぼちでんな」は、LLHL LLH。
「トントン」は、LLHL。
「泣き泣き」は、HHHH。
「あきまへん」は、HHHHH。

「ヤクザ」は、LHL。
「ヨシモト」は、LHLL。
「アキンド」は、LHLL。
「オバハン」は、HHHH。
「ヤンキー」は、LLHL。


その2につづく。






2017年4月23日 (日)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「あかめつる」を読んで その3

私の愛好する大阪弁に、「スカ」というのがある(スカタンもここから出ている)。
スカというのは透きから出ていて、あてはずれ、期待はずれ、くいちがい、破約、空虚などの意味を含む。(p.166)


私の内省ではそのような状況、状態でも使わなくないが、人に使う方が多い。
ただ、そこまで可愛げのあるタイプには最近出会ってないような気がする。

スカタンだと、それほどマイナスな意味ではない。
ちょっととぼけたぐらいのミスに使うことが多い。

「スカ屁(p.167)」は使わない。すかしっ屁(スカシッペ)の方が使う。
直感的にすかしっ屁の方が、語形は関東方言のような気がする。

ただ、こういった直接的な表現は大阪弁の方が起こりやすいかと。
「透かす」の語幹+「屁」の「スカ屁」が、連用形+「屁」で促音が挿入された変化だろうか。

駄菓子屋の当てもんの話がp.167に出てくるが、ハズレくじのことをスカという。
これはあてはずれや期待はずれからの派生用法だろう。

外れた状況に対して「スカ」と言ってるのではなく、ハズレくじそのものを「スカ」というので。
「うわっ、スカ引いてしもた」のように。

「スカみたいな奴(p.168)」は派生語としてのスカを再び人に用いた用法。
どんな奴をこの例として用いたのかは以下の通り。


 あるときの正月、若い衆が年始回りにやってきた。中小メーカーの下っ端だろう。
 誰も知らない顔だった。
 ごくわかい男で、影のうすい、オドオドした若い衆である。彼は入口でモジモジしてオーバーを脱いだ。(中略)
 門口で真っ赤になってボソボソといい、蚊の鳴くような声で誰にも聞きとれない。みんな呆れて、じっと見ている。若い衆は泣き出しそうな顔でぺこんとお辞儀して、オーバーを抱えたまま店をとび出した。
「あれでも年始まわりかいな」
 とどっと、一同笑い、大将は、
「どこの若い衆や」
「○○アルミちゃいまっか」
「いや、××軽金属ときこえましたで」
「スカみたいな奴ちゃなあ」
とみなみな、腹を抱えて大笑いになった。(pp.169-171)


営業マンだと元気がいい方がいいんだろう。
でも、元気が良すぎるのは逆に疲れる。

芸人がテレビで元気よく張り芸をやってるのはいい。それは芸の一つだからおもしろい。
一方で、例えば職場で明るく元気にはしゃいでるのは、生理的に受け付けない。

子どもは多少諦めるが、大人だとできればかかわりを持ちたくない。
そういう大人は、子どもよりたちが悪い。

私にとっては、そういう奴もスカみたいな奴。スカタンよりスカみたいな奴の方がマイナスの度合いが強い。
そして、そのスカは空虚レベルではない。元気であっても、ただのはずれくじなので。

破約の用法としては「スカくらう」(p.171)。待ち合わせですっぽかされた時に使う。
私は今は使っていないが、十分に理解できる表現。

スカみたいな奴とは、できるだけスカくらわしたいと思うのは私だけ?
顔をあわせてスカみたいな気分になるのは、ストレスがたまるだけなので。



「スカ」のアクセントは、LH。
「スカタン」は、LLHL。

「スカ屁」は、LLH。
「すかしっ屁」は、LLHLL。

「スカ引いてしもた」は、LH HHHHLL。
「スカみたいな奴」は、LHLLLL HL。
「スカくらう」は、LH HHH。



この章終わり。





2017年4月17日 (月)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「あかめつる」を読んで その2

大阪弁の特徴は、大体において、三つある、と私は思っている。(p.164)


こういう指摘は興味深い。
正しいかどうかは別にして、直感的な記述というのは当たらずと雖も遠からずである。


一つは、自分のことをいうのに、他人風な言い廻しをすること。(p.164)
「ちょっと待てや、おい、ワシにも言わしたれや」(p.164)
「僕にも見せたってえな」(p.165)

二つめは、水をぶっかける所があることだ。
何にでも水をぶっかけて冷静にしてしまう。
「赤目吊って」と指摘されると、そうか、と内々反省して、一瞬ひるむ、そういう語を発明することが多い。(p.165)

その三は、即物的なことであろう。(p.165)


さて、今回は即物的な表現をとりあげることにする。
まずは「めめくそ」。

ちょっぴり、といえばいいものを、目々糞という。
「めめくそほどの金くれて、えらそうにぬかしよんねん」(p.165)


人によっては、「みみくそ」と言ってるかもしれない。
「めくそほどの金」では、しっくりこない。ここは「めめくそ」でないとマイナス感が出ない。

中腰になってしまう「屁っぴり腰」を「ババ垂れ腰」(p.166)と言ってたらしい。
下品な表現が好きな子どもならと思ったが、聞いた記憶がない。

直接的な言い廻しは、商用語でもあったようだ。
その方が話が弾むのかどうかは、商人でない私には分かりづらい。


「小便しよった、というと、商談成立したもんを水に流す、解約することです」(p.166)
「ババ掛けよった、これは品物だけ取り込んで代金渡さん、悪質なるをさす」(p.166)


まあ、汚いものというのから、マイナス方向に派生したんだろう。
現実の場面は想像したくないが、実際にこれをやってもしっくりくるような気がする。




「言わしたれや」のアクセントは、HHHHLL。
「見せたってえな」は、LLLLHLL。

「めめくそ」は、LLHL。「みみくそ」も同様にLLHL。
「めくそ」はLHL。

「へっぴりごし」は、LLLHLL。
「ばばたれごし」は、HHHHHL。
「ばばたれ」は、HHHL~LLHL。

「しょんべんしよった」は、HHHH HLLL。
「ばばかけよった」は、HH LHLLL。



その3につづく。







2017年4月 6日 (木)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「あかめつる」を読んで その1

「あかめつる」pp.162-172

この過疎ブログが大阪弁ちゃらんぽらん読後感に路線を変えて1年2か月が経つ。
今回、これはどうにもこうにもという語彙にあってしまい、どうしよと考えてるところ。

まず、形態素解析ができなかった。
「赤目 吊る」で、ようやく少しだけ想像できるようになった。

血相変えた状態(p.162)とある。
赤目で血走って吊り目やったら、だいぶやばい奴なんだが。

「不仲になる」は結果論で、「赤目を見せていがみ合ふ」が正しいとのこと。
正しいかどうかは別にして、後者が先で前者が派生であることは分かる。

「目+かね>眼鏡」「目+いぼ>めいぼ>(…>めば)」みたいな、分かりやすい語構造。
しかし、私の脳内に全く存在しなかった。ひとまず例文を理解していくしかない。


「えらい赤目吊ってボロクソにいいよんねん」(p.163)


これに対する田辺聖子さんの所感がいい。


目を血走らせてまなじりを吊り上げ、肩をいからしている状態を活写してあますところがない。しかも、そういう怱忙のあいだに、ちゃんと相手の目の色まで見届けているということで、余裕のあることだから、実兄描写におかしみが添う。あるいは、いきり立つ相手に、
「そない赤目吊っていわんでもよろしやないか」
となだめてかかるとき、ふと相手に、おのれをふり返らせる機会をも与える。(p.163)


傍から見てたらというだけで、当事者にそんな余裕はないと思う。
これについては、男女差による見解の違いだろう。


「赤目吊って働いたかて、月給上るやなし、……ボチボチにしとかな、あほらしわ」(p.163)

営業マンか、年度末の経理か、締切直前の設計か。
あるいは書類作成に追われてパソコンと格闘している社員か。

必死のパッチで働くのは時に必要だが、赤目吊ってたら血圧上がって仕方ない気がする。
でも、誰かが働かなければならない時はある。

亭主の好きな赤烏帽子。ブラック企業での理不尽な赤であるという皮肉な解釈ができる。
そしたら、ブラック企業には赤目吊ってるのが多いんだろうか。

いや、赤目を吊る前に、顔が青ざめているような気がする。




「あかめつる」のアクセントは、さんざん悩んだあげくLLHHH。
「赤目」がLLH、「吊る」がHHなんで、そうした。


「ボロクソ」はHHHH。
「必死のパッチ」はLLLH LLH。



その2につづく。





2017年3月30日 (木)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「あもつき」を読んで その2

祖母は、外から買えると何々に金を使ったか、洟紙(はながみ)に、鉛筆をなめなめ、書いていたが、それがおかしかった。
「一、すこん 一、おかしん 一、まめさん 一、おまん 一、けつね」(p.157)

「すこん」は「酢こんぶ」、「おかしん」は「お菓子」、「まめさん」は「小さな塩豆」、「おまん」は「饅頭」、「けつね」は「きつねうどん」を指す。場面や文脈があれば、聞いて理解できる語彙だが、どれも使わない。

「まめさん」が「塩豆」を指すのは、私では容易に想像しにくい。
「けつねうろん」は河内なまりとあるが、「うどん」を「うろん」と言う以前に、私は「けつね」も使わない。

「シ」が「ヒ」になる、例えば「七(ヒチ)」「質屋(ヒチヤ)」は今でもそう言う時がある。
一方で、「キ」が「ケ」になるのは、おそらく使っていない。「ケ」で思いつくのは「けーへん」ぐらいか。

「来る」に打消しの「~へん」がついたら、「けーへん」と言う。「きーひん」は使わない。
よそ行きの大阪弁の時には、いわゆる新方言の「こーへん」を使うことがある。

「する」は「せーへん」。これを「しーひん」とは言わない。
ただ、「する」の場合は、「せぬ」なので「せ」で違和感がない。

「来る」は「来ぬ」だから、「けーへん」じゃなく「こーへん」が生じる。
しかし、これは「キ」が「ケ」ではない。だから、私の内省では「キ」が「ケ」になる語彙が思いつかない。


モチのことを祖母や曾祖母、掛人(かかりゅうど=居候)の老女などは「あも」といっていた。歯のぬけた老女達が「あもを沢山(ようけ)いただいて」などと笑い合う。(p.158)


この章のタイトル「あもつき」の「あも」がようやく登場。
私の脳内には全くなかった語彙で、これは聞いても容易に想像できない。

「あもつき」は「餅つき」のこと。
「正月きたら、あも搗いて……」という子守歌(p.160)があるそうだ。

さて、最後に近松の『関八州繋馬』に、以下の文言があるとのこと(p.161)。
「今宵はお寝間でしっぽりと、お二人のあもつき」

「もちつき」の意味だと分かりにくいが、こっちの例だと分かりやすい。
熊八中年[注]の「何となく、卑猥な語感でしたなあ」(p.160)も分からなくはない。




「はながみ」のアクセントはHHHH。
「すこん」はLHH~LLH。
「おかしん」はLHLL。「お菓子」はLHL。
「まめさん」はLHLL。「豆」はLH。
「おまん」はLHL。「饅頭」はHLLL。
「けつね」はLLH。「けつねうどん」はLLLHLL。

「あも」は、私の内省ではLH。
知らない語彙でも私のアクセントだとどうかということについて、これまで記してきたが、「あも」はゆらぐ。HHでもいいかもしれない。HLは違う気がする。
「あもつき」は、HHHL。「もちつき」がHHHLなんで、そこからの類推でそう言う。


追記
・京の御所ことばとして挙がっている例(p.158)
「お豆」LHL。
「おながもの」はうどんのこと。LLLLH。
「いともの」は素麺のこと。LLLH。LHLLだと「糸でできた製品」となる。
「おしわもの」は梅干しのこと。LLLLH。

・大阪弁で「うまくない」というのを「もみない」といい(p.159)
私は使わない。
「もみない」はLHLL。
「うまくない」は「LHL LH」
「うもない」はLH LH。「うもない」から類推するとLHLHだが、「もみない」はLHLLの方がしっくりくる。


[注]熊八中年 本文にしばしば登場する野卑で下ネタ好きな男性。







この章終わり。





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