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2020年8月

2020年8月30日 (日)

『大阪弁おもしろ草子』「けったくそ悪い」を読んで その3

「尻」に対する「しり」と「けつ」の使い分けについては、あまり気にしたことがなかった。

というか、「けつ」関連の表現が方言であるのは、私にとっては気づかない方言ということであった。

 

「尻から出た虫のようにいう」(p.59)は、知らない表現である。

最も卑しむべき、忌避すべき、見下げ果てた、取るに足らない、人交わりならぬ人間のことを指すようである。

 

「けつわる」(p.59)は、挫折して志半ばで初志を抛棄(ほうき)することを指す。

これは知っている。諦めるって感じで使っている。

 

派生しての倒産するの意味では使わない。

それは、私が商売人でないからだと思う。

 

ただ、「けつわる」は中途で断念であって、完全にお手上げでの破産なら、「ばんざいする」とのこと。

これもお手上げの意味では言うけれど、破産の意味では私は使わない。「グリコやな」も同様。

 

なお、「けつわる」については、ぶちまける、暴露するという意味もあったようだが、田辺さん世代でも使用語彙ではないとのこと。

私も全く知らない。

 

「けつからせんぐりに」(p.60)は、後ろから順に数えるということになるが、「せんぐり」を使わない。

「けつから数えてみい」(p.60)なら、すんなり頭に入ってくる。

 

「けつまくる」(p.60)は、居直るという意味だが、方言ではないとのこと。

辞典には「尻をまくる」という言い方もあるようだが、これでは座りが悪い。やはり、「けつ」でないと。

 

「けつふく」(p.61)は、後始末をするという意味だが、これは方言のようである。

これも尻では落ち着きが悪い。それだと、大便の後の動作をそのまま言ってるだけになってしまう。

 

片腹痛いという意味の「けつかゆい」(p.61)や、煽動するという意味の「けつかく」(p.61)も全く知らない。

田辺さんが聞いたことがないというのだから、私なら当然かも。

 

何しろ祖父が死んでからは、大阪弁の輝ける猥雑には私は縁遠くなってしまったので。(p.61)とある。

輝けるが秀逸な表現である。

 

若い頃は年寄りの言葉に耳を傾けないもので、そのせいでたくさんの知識を得る機会を失ってきたのだと思う。

自分が歳をとってから気づくものである。

 

 

「しり」のアクセントは、HL。

「けつ」は、HL。

 

「尻から出た虫のようにいう」は、HLLL HL HHH HLL HH。

 

「けつわる」は、HL HH。

「ばんざいする」は、HHHHLL。

「グリコ」は、LHL(~HLL)。

 

「けつからせんぐりに」は、HLLL ?LLLLH。

「せんぐり」は、?LLLH。

「けつから数えてみい」は、HLLL HHHHHL。

※「~みい」の部分で下降調HLでも上昇調LHでも言えるが、使い分けを上手く説明できない。下降調の方が自然。

 

「けつまくる」は、HL HHH。

「尻をまくる」は、HLL HHH。

 

「けつふく」は、HL HH。

 

「けつかゆい」は、HL HLL。

「けつかく」は、HL LH。

 

 

 

その4につづく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年8月 2日 (日)

『大阪弁おもしろ草子』「けったくそ悪い」を読んで その2

大阪人はことに

「小便(しょ)」

に異常し好を有しているのではあるまいかと思われるくらい、愛着する。(p.58)

 

田川さんの、「」の使い方は好きである。

実際の発音にできるだけ近づけようとする意図が、大阪弁をちゃんと理解している感満載なので。

 

この下付の「 」も、撥音の軽快さを示している。

しっかり言う「ン」とは違うということである。

 

しっかり強調してダメだという時の、「あきまへん」の「ん」は下付では座りが悪い。

それに比べると、小便は下付のンの方がしっくりくる。

 

大阪弁のセリフを言わせるときは、わざわざこのルビを振るという。

東京人の編集者が勝手に「しょうべん」に直してしまうというのは、無粋というか無知というか。

 

方言に対する適切な表記を理解してもらえる編集者と出会えたんだろうか。

今となっては聞く術もないが。

 

この著書でも、いちいち説明したんやろうなと。

私も以前に「しゃあない」とは書かないけど、「しょうがない」と書いたら「しようがない」に修正されて、再修正を要求した。

 

そこは軽口で伝えたいところなんで、と説明したが、まだまだ大阪弁は書きことばには向かないのかもしれない。

だから、余計にこの下付の「 」はいいと思える。

 

なお、下付で表記するけど、モーラ性は感じる。

この「 」によって、CVN音節の意識が強まるかと言えば、そうでもない。

 

さて、「小便する」は商売用語で「商談を解約する、取り消しする」という意味。

ちなみに「ババかける」は、「品物は取って代金は払わぬこと」の意味である。

 

日常語として、「しょ」という発音ではあるが、それほど頻繁に使う言葉ではない。

これは、世代と生活環境によるものだと思う。

 

 

「しょ 」のアクセントは、HHHH。

「小便する」は、HHHHHH。

「ババかける」は、HH LLH。

 

 

 

その3につづく。

 

 

 

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