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2019年8月 4日 (日)

『大阪弁おもしろ草子』「そやないかいな」を読んで その2

かつて大阪弁が嫌われ、大阪でもそこから抜け出そうとしていた人たちがいた。

大阪偏重主義があれば、大阪脱却主義があってもおかしくない。

 

祖父母や父などはそんなことに関係なく「そうでっか」「知りまへん」などとやっていたが、私の母は岡山から大阪へ嫁に来た者で、かつ小学校の先生の経験もあったから、若いインテリ(と自負している)心に、標準語を上等のように思ったのであろう、子供の私が、「そうやしィ」「あかんしィ」などというと、下品な言葉を使う、と叱られた。(pp.40-41)

 

小学校の先生が規範的なのは仕方がない。

いわゆる正しい日本語を教えなければならないので、過剰な意識を持っている。

 

ただ、岡山という地域性を考えると、まったくもって方言むき出しの地域である。

私は望ましい姿だと思っている。そして、下品と言われる筋合いはない。

 

岡山を叩いているわけではない。岡山には4年住んだので。

地元民が岡山弁を汚いということがあったが、ことばにきれいも汚いもない。

 

そこにあるのは、人間の美醜だけである。

もちろん顔の話ではない。

 

父の若い弟妹、私の叔父叔母たちも精いっぱい、東京風のコトバを使おうと気取っていたが、どうやっても追っ払えないのが語尾変化であった。もちろんアクセントやイントネーションはよけい変えにくいが、大阪弁の語尾を東京風にするというのは、むつかしい以上に、首をくくりたくなるような恥ずかしさがある。お芝居のセリフをしゃべらされているようになり、言葉の生命力が失われてしまう。(p.41)

 

首をくくりたくなるような恥ずかしさというのは、秀逸なたとえだと思う。

言葉の生命力という表現よりも、腹の底から嫌いなんじゃという思いが伝わってくる。

 

虫唾が走るほど、嫌っていない。むずがゆくなるほど、生理的に受け付けないわけでもない。

ただただ、そんな気取ったコトバを使うのはこっぱずかしいという、正直な感想であると推察する。

 

京阪アクセント圏出身者が、俳優やアイドルになった時には、共通語に矯正され、二方言話者となる。

大阪弁むき出しのままでは、映画でもドラマでも使いにくいからであろう。

 

また、東京に出れば、周りのほとんどが共通語でしゃべっているので、耳から学ぶことができる。

大阪でテレビやラジオで聞くだけでは、なかなかうまくいくものではない。

 

私みたいにほぼ合わせる気がないものにとっては、話し言葉としての共通語は無用の産物である。

もちろん、使用語彙としての話で、理解語彙としては共通語は役に立つ。

 

だから、理解はしても使う気はない。

それでも、東京ではよそいきの大阪弁をしゃべっているので、そこそこあわせようとはしている。

 

祖父がついに、「じゃらじゃらした快っ態(けったい)なコトバ使うもんやない!」と一喝してわが家の言語近代化運動、方言矯正運動は立ち消えになってしまった。(p.41)[注]

 

私は寺内貫太郎一家は嫌いだったが、こういう内容なら祖父の一喝は、むしろ望ましい。

これがハラスメントになるようでは、あまりに世の中世知辛い。

 

 

「そうでっか」のアクセントは、HHHHH。

「知りまへん」は、HHHHH。

 

「そうやしィ」は、HLL+R。

「あかんしィ」は、HHH+R。

 

「じゃらじゃらした」は、HLLLLL(~HLLL+HL)

「けったいな」は、HHLLL。

「コトバ」は、HLL。

「使う」は、HHH。

「使うもんやない」は、HHHHLL LH。

 

 

 

その3につづく

 

 

 

 

 

[注]

「けったい」は、規範的な日本語だと「卦体(けたい)」の促音化として、この漢字が当てられる。

語源の真偽はさておき、それはそれで。

 

ただ、田辺さんの意図としては、「快っ態」の方が実態に近いと捉えている。

私も素直に首肯できる。まあ、公文書で「けったいな」は使われることはないので、むしろ「快っ態」を広めたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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