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2019年7月 1日 (月)

『大阪弁おもしろ草子』「ちちくる」を読んで その9

前回、「ちちくる」は「乳繰る」と書いたが、どうやら違うらしい。

このあたりは、昔の方言を知らないと分からない。

 

上方には「ててくる」(p.36)があったようだが、田辺さんも知らない昔の言葉のようだ。

1928(昭和3)年生まれで知らないとなると、大正以前の近代の方言と推測できる。

 

歌舞伎『伊勢平氏栄花暦』には、「ちょよけ、まちょけ」(p.37)が出てくるようだ。

初演は1778(天明2)年なので、近世の方言ということになる。

 

ここから、「ちぇちぇくる」「ちゃちゃくる」(p.37)という言い方が、派生している。

ということで、「ちぇちぇくる>ててくる>ちちくる」という流れができあがる。

 

さて、この「ちぇちぇ」は、牧村説では雀の鳴き声の擬声語であるようだ。

「すずめ」の「すず」も雀の鳴き声と推測できるが、このつながりは今はおいておく。

 

<語源は雀などのさえずる声を模した擬声語「チェチェ」「チョチョ」「チャチャ」などを、男女が密会して私語するのをののしっていうに用い、それが転じて、密通する意味になったという>(p.38)

 

となると、「チョネチョネする」が派生語であるという田辺さんの推測は、まんざら間違っているとは思わない。

そう考えた時に、先に示した一列の変化は違うのではないかと考え始めた。

 

「ちぇちぇくる>ちちくる」という江戸での変化、「ちぇちぇくる>ててくる」という上方での変化がある。

それから、共通語化した「ちちくる」が普及。

 

それとは別に「ちぇちぇ>ちょねちょね>ちょめちょめ」という隠語の派生があったと推定する。

山城新伍の「ちょめちょめ」は、「まことちゃん」からの流れをくんでいないことは明らかである。

 

→ 『大阪弁ちゃらんぽらん』「チョネチョネ」を読んで その2

 

よって、「ちちくる」の「乳」が当て字であることが分かる。

さらに言えば、後発で雀から猫に変わった「ニャンニャンする」(p.37)という言葉が生まれたんだろう。

 

山城新伍の『アイ・アイゲーム』を見ていた世代は、ちょめちょめまでの変化を理解することができた。

そして、『夕焼けニャンニャン』を見ていたおニャン子世代には、この歴史はありがたい。

 

 

「乳」のアクセントは、LH。

 

「ちょよけ、まちょけ」は、LLH LLH。

「ちぇちぇくる」「ちゃちゃくる」「ててくる」「ちちくる」は、いずれもLLLH。

 

「ちょねちょね」「ちょめちょめ」は、HLLL。

 

「ニャンニャンする」は、HLLLLL。

 

 

 

この章終わり。

 

 

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