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2019年5月 9日 (木)

『大阪弁おもしろ草子』「ちちくる」を読んで その6

「あっ。あたしのつけ睫毛、どこへやったん? それで拭いてしもたんちゃう? ママ」

「どないしてくれるのん! 四千円もしたんよ、まどてんか!」(p.33)

 

「まどう」に弁償するという意味があるのは知らなかった。

ただ、これは惑うではなく、償ふである。

 

古語にあたるので、古文をほとんど読まない私にはなじみがなく、現代語としては知らないのかもしれない。

同時に年長者のいかにもという大阪弁にも長らく接していないので、しょうがない。

 

著者にとっては、「まどてんか」は「いかにも図々しく阿漕にきかれる(p.33)」という語感のようだ。

「ど」の響きが強いかららしい。

 

これは実際の場面で、音声を聞いてみないと分からない感覚である。

私はこれを読んでいて、はんなりした感じの音声を想定していたので。

 

「どないしてくれるのん!」のビックリマークで、強い怒りを感じるべきだったのか。

「弁償してーやー」より、はるかにきつい感じがするんだろうか。ぜひ、聞いてみたい。

 

また、「じゃらじゃら」についても、はじめて知った。

鍵がじゃらじゃらといった、じゃらじゃらではない。

 

「そんなじゃらじゃらした話がおますかいな(p.34)」

ばかばかしい、ふざけたという意味合いである。

 

『仮名手本忠臣蔵』七段目に<互に見合す顔と顔、それからじゃらつきだして身請の相談>とあるらしい。

著者にとっては、淫猥な語感と感じるようである。

 

これをもって、上方弁には男女の交情を暗示させるような口吻のひびきが多いと感じているようで、情緒纏綿の雰囲気を「じゃらじゃら」で片付けているとしている。私は「いちゃつく」の方が、いやらしさを感じるが。

 

淫靡あるいは下衆な方言は、各方言に備えられていると想像できる。

ただ、こういった語彙は方言暖簾に出ることはなく、学者はまともに調査しないので概要が見えない。

 

語彙は死ぬ語もあれば生まれる語もあるので、今は今でそういう表現が新たに出てきては消えを繰り返す。

知らずに生きる人になんとも思わないが、私はまだそういう好奇心は失せない。

 

うわべの上品さよりは、下衆のほうが人間らしいとまではいわないが、やはり興味は尽きない。

「ずっこんばっこん」から「ズッコンバッ婚」に派生した時は、下衆なセンスにある種の感銘を受けた。

 

 

 

 

「まどう」のアクセントは、HHH。

「まどてんか」は、HHHHH。

 

「どこへやったん」は、HHH HHLL。

「拭いてしもたんちゃう」は、HHHHLLL HH。

「どないしてくれるのん」は、HHH HHHHHLL。

「したんよ」は、HLLL。

 

「じゃらじゃら」は、HLLL。

 

「じゃらつく」は、HHHH。

「いちゃつく」は、HHHH。

 

「ズッコンバッコン」は、LLHH LLHH。

「ズッコンバッ婚」は、LLLLHHLL。

 

 

 

その7につづく。

 

 

 

 

 

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