« 2017年9月 | トップページ | 2017年11月 »

2017年10月

2017年10月23日 (月)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「タコツル」を読んで その3

接頭語には「ド……」をつけたらよいとすると、これに対応して接尾語には、
「くさる」
「さらす」
「けつかる」
「こます」
などというのがあり、すべて動詞活用形下につけて活用すると、怒罵とみに生彩を帯びて、輝やかしくなる。(p.199)

この章は、とにかく卑罵語が多くて、懐かしい。
方言の卑罵語は、その地域でしか使わないのが通常であろうから。

「くさる」の例文はないのだが、「~しくさって」が多いか。
共通語に訳すると「しやがって」だが、迫力がなくなる。

「やがる」は江戸っ子も使うが、大阪弁の「さらす」は一段と語意が強い(p.199)とのこと。
「何しやがる」よりは、「何さらすねん」の方が迫力があり(p.199)、間違いなくガラが悪い。

なお、「何さらすねん」は「何さらしとんねん」「何さらしてんねん」というように「~とる」「~ている」で言うこともできる。
「何しやがっている」は、私の内省ではありえない。

「けつかる」は「何ぬかしてけつかる」(p.199)が例示されている。
私はこの基本形を聞いたことがなく、「何ぬかしてけつかんねん」が最もなじむ。

古くは「けつかる」で、「けッかる」は近代風とのこと(p.200)。
ただ私は詰まって言わないので、「なンかッさらッけッかるねン!」(p。200)を聞いてもすぐには理解できない。

この例では、「さらす+けつかる」の構造になっている。
「何しくさってけつかんねん」のように「くさる+けつかる」は言えるが、「こます+けつかる」は無理。

「こます」は自分のことをいうとある(p.200)が、違和感がある。
「いうてこましたった」(p.200)は私は知らない。

「こます」で思い浮かぶのは、「いてこます」で、おそらく「いうてこます」の縮約形だろう。
共通語に訳すると、「やってしまうぞ」なんだが、やはり迫力がない。


「くさる」のアクセントは、HHH。
「しくさって」は、HHHHH。

「さらす」は、HHH。
「さらすねん」は、HHHLL。
「さらしてんねん」は、HHHHHLL。

「けつかる」は、HLLL。
「けつかんねん」は、HLLLLL。

「こます」は、HHH。
「いてこます」は、HHHHH。


その4につづく。




2017年10月 4日 (水)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「タコツル」を読んで その2

その他の「ド+」をみてみたい。
ド美人、ドイケメンというように、基本的にプラスな語彙にはつかない。

だからといって、ドデブ、ドブタ、ドチビ、ドノッポ、ドハゲは言わない。
クソデブ、クソブタ、クソチビ、クソノッポ、クソハゲなら言えるのだが。

「ド根性」は、我々世代では『ド根性ガエル』で有名だが、ド根性はもとは大阪弁。
近松門左衛門が使っていたことからもうかがえる。

「ドツボ」は「土壺」ではなく、「ド+つぼだと私は思っている。
ここでの壺は容器ではなく、滝つぼの「つぼ」のようにくぼんだところ。

ドツボは肥溜。ドツボにはまるは、肥溜に落ちるぐらいひどいことになるということ。
だから、ツボにドがついて罵言にしたのだと思っている。

「どつく」の「ど」も「ド」ではなかろうかという気がする。
「奴を突く」で「どつく」というのは、こじつけ感がある。

最下位をあらわす「どべ」の「ど」は「ド」であろう。
ベベ系語彙の「べ」に「ド」がついた形。

私はベベよりベッタがなじむ。ベベタは、なんか泥臭い。
人によっては「どんべ」とも。なんか泥臭い。

「どんくさい」は「ド+くさい」としたいところだが、「く」の前で「どん」となる音韻論的根拠が乏しい。
「鈍臭い」と表記するのは違和感があるが、これは「ド」ではないのかも。

「どぐされ」というのが、ふと頭に浮かんだ。
90年代半ばのフジテレビの深夜番組で、子供向けヒーローの主題歌なのに「♪どぐされげどーを たおすため」みたいな歌詞だったのを思い出した。

ただ、これは大阪弁ぽくはない。『どぐされ球団』の作者は長崎出身。
『リーガルハイ』の古美門研介は鹿児島出身。だから、九州方言だと推測。

最後に、今さらながら「超ド級」の「ド」は卑罵語ではなく、ドレッドノートをあらわす「弩」。



「ド美人」のアクセントは、、LHLL。「美人」は、HHH。
「ドイケメン」は、LHLLL。「イケメン」はLLHH。

以降、言わない語彙は割愛。


「デブ」は、LH。「クソデブ」は、HHHH。
「ブタ」は、LH。「クソブタ」は、HHHH。
「チビ」は、LH。「クソチビ」は、HHHH。
「ノッポ」は、HLL。「クソノッポ」は、HHHLL。
「ハゲ」は、LH。「クソハゲ」は、HHHH。

「ド根性」は、LHLLL。「根性」は、LHLL。

「ドツボ」は、LHL。「つぼ」は、HH。

「どつく」は、HHH。「突く」は、LH。

「どべ」は、LH。「どんべ」は、LHL。
「ベッタ」は、LLH。「ベベ」は、LH。「ベベタ」は、LHL。

「どんくさい」は、HHHLL。「くさい」は、HLL。

「どくされ」は、LLLH。

「超弩級」は、HHHLL。

それから「ド阪神(p.198)」は、LHLLL。「ドタヌキ(p.198)」は、LHLL。

「ド+」のアクセントは、低起式で語頭から2拍目の後ろに下がり目だが、例外は多い。
「クソ+」のアクセントは、高起式で後項の下がり目から下がる。


その3につづく。



『大阪弁ちゃらんぽらん』「タコツル」を読んで その1

「タコツル」pp.197-208

ドあほ、ド畜生、ド餓鬼、ド嬶、ド盗人、ドタフク、ドタマ、ド助平… (pp.197-198)

ドをつけられる言葉に世代差あるいは個人差がある。
この中でも使うものとそうでないものが。

ドあほは使う。ド馬鹿は言わない。ドボケも言わない。
クソバカ、クソボケとは言えるが、クソアホは言えない。

なお、アホは坂田利夫さんと藤山寛美さん。
ドあほうは、初代桂春団治さんと藤村甲子園。

ド畜生は使ったことがない。これは言ってもおかしく感じない表現。
畜生よりひどい奴と出会ってないからか。

ド餓鬼も使わない。
クソガキよりかわいげのない奴がいれば使うかもしれないが、「ドガ」という濁音連続が気になる。

ド嬶(かか)も使わない。ド父もド母もド兄もド姉も言えない。
クソジジイ、クソババアは言えるが、クソトーチャンには違和感がある。

ド盗人も使わない。ド泥棒よりは、ド盗人か。面白い。
三億円事件の犯人が該当するのか、あるいは強盗殺人事件の犯人か。

いずれにせよ、そんな可愛げのあるものではない。
会社や店や家の金をくすねてとんだ奴が、ド盗人のレベルか。

ドタフクは、お多福顔をより罵った表現。この本を読んで覚えた。
おたふくを美人と捉えるか、ブスと捉えるかには個人差がある。

私は、おたふくを罵詈雑言に使えないので、ブサイコかブス。
ドをつけるなら、ドブス。クソブスは微妙。最近は使う相手がいない。

ドタマは、ド+アタマの縮約形。理解はできるが、使う機会はかなり少ない。
「ドタマかちわったろか」といった用例がある。「ドタマ悪いんか」は、内省では微妙。

ド助平は、ドスケベーではなく、ドスケベ。私は末尾は伸ばさない。
ええ歳こいた大人が、そういう話で盛り上がる機会はほとんどなくなった。

だから、誰がドスケベなのか、分かりにくくなっている。
ドスケベは行動規制ができていれば、知識人と言えるんだが。



「タコツル」のアクセントは、まだ語構成が分からないので、保留。

「ドアホ」は、HLL。
「アホ」は、LH。「バカ」は、HL。「ボケ」は、LH。(お笑いのボケはHL)
「クソバカ」は、LLHL。「クソボケ」は、LLLH。
「どあほう」は、LLHH~HLLL。

「ド畜生」は、LHLLL。「チクショー」は、LHLL

「ド餓鬼」は、LLH。
「ガキ」は、LH。「クソガキ」は、LLLH。

「ド嬶」は、LLHL。「かかあ」は、LHL。
「クソジジー」は、HHHHL。「じじい」は、LHL。
「クソババー」は、HHHHL。「ばばあ」は、LHL。

「ド盗人」は、LLHLL~LLHHL。
「ぬすっと」は、HHLL~HHHL。「どろぼう」は、HHHH。

「ドタフク」は、LHLL。「オタフク」は、LHLL。
「ブサイコ」は、HLLL。「ブス」は、LH。「ドブス」は、LLH。

「ドタマ」は、LHL。「アタマ」は、LHL。

「ドスケベ」は、LLHL。「スケベ」は、LHL。




その2につづく




« 2017年9月 | トップページ | 2017年11月 »

フォト
無料ブログはココログ

人気ブログランキング

2017年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31