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2017年4月

2017年4月30日 (日)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ぼろくち」を読んで その1

「ぼろくち」pp.173-183

「こんにちは」が正しい表記とされているが、これが好きじゃない。
私の中では「こんにちわ」の方が、すっきりする。

助詞の「は」については多少は仕方ないと思うが、「こんにちは」「こんばんは」は「は」である必要を感じない。
既に挨拶ことばとして一単語なのだから、助詞の「は」とは異なる扱いで「わ」にした方がいい。

さて、大阪弁でのあいさつで誇張された表現として、「もうかりまっか」がある。
商人との付き合いがないので、ギャグじゃなく使ってるのをいまだに聞いたことがない。

「もうかりまっか」に対して「ぼちぼちでんな」はかなり儲かってる奴が言うらしい(pp.174-175)。
他のは以下の通り(p.175)。


「トントンいうとこですわ」:収支相つぐなうが如く、いい恰好するのは、ちょっと儲けてる奴。
「ま、泣き泣きですなあ」:まずまず儲けてる。
「あきまへん」:ほんとうに儲けてない奴が血を吐く一語を口走る。


この区別があるということは、この表現は都市伝説ではないということか。
なお、「もうかってます」という阿呆はおらん(p.174)ようだ。

中島らも氏が「マスコミに描かれる関西人は、ヤクザ、アキンド、ヨシモトの三つの人種のみ」と記したことがある。 『西方冗土』(1994)
言い得て妙である。他に「オバハン」がいる。「ヤンキー」は廃れたか。

鷲谷樗風(わしたに ちょふう)氏は、明治28年ごろに書かれた「大阪にないもの一覧表」を引用されている。 『大阪春秋』3号(1974)
以下に引用する。(引用先は『大阪弁ちゃらんぽらん』pp.175-176)


1.華族  2.大臣  3.博士  4.ガス燈  5.二頭馬車
6.図書館  7.眼鏡橋  8.洋装美人  9.先曳の車
10.洋食宴会  11.鉄道馬車  12.一現の客
13.車上読書  14.横綱力士  15.馬車令嬢
16.板葺屋根  17.新聞号外  18.東照権現


さすがに時代が違いすぎる。そもそも今はないものは当然ない。
東照権現崇拝は、太閤ファンに袋叩きにあうだろう。

博士は近年増えているだろう。そして、図書館で勉強する人もたくさんいるだろう。
総理大臣は、戦後に幣原喜重郎(しではら きじゅうろう)氏が1945~1946年に。

華族は、1911(明治44)年に鴻池善右衛門(こうのいけ ぜんえもん)氏と住友友純(すみとも ともいと)氏が、1920(大正9)年に幣原喜重郎(しではら きじゅうろう)氏と松井慶四郎(まつい けいしろう)が叙爵している。

横綱は戦前に大錦卯一郎(おおにしき ういちろう)が1917年に第26代横綱に。
洋装美人は山ほどいるし、日夜洋食宴会は開かれているだろう。

1895(明治28)年になかったものが、やがてあるように。
これは新聞の号外でも出して、当時の方々にお知らせしないと。



<付記>
なお、新聞号外は、日清戦争(1894(明治27)-1895)や日露戦争(1904(明治37)-1905)において報道合戦が行なわれ、大阪毎日新聞も発行している。
ガス燈は、1871(明治4)年に大阪の造幣局で灯されている。


「ぼろくち」のアクセントは、HHHH。
「こんにちわ」は、LLLLH。
「もうかりまっか」は、HHHHHHH。

「ぼちぼち」は、LLHL。「ぼちぼちでんな」は、LLHL LLH。
「トントン」は、LLHL。
「泣き泣き」は、HHHH。
「あきまへん」は、HHHHH。

「ヤクザ」は、LHL。
「ヨシモト」は、LHLL。
「アキンド」は、LHLL。
「オバハン」は、HHHH。
「ヤンキー」は、LLHL。


その2につづく。






2017年4月23日 (日)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「あかめつる」を読んで その3

私の愛好する大阪弁に、「スカ」というのがある(スカタンもここから出ている)。
スカというのは透きから出ていて、あてはずれ、期待はずれ、くいちがい、破約、空虚などの意味を含む。(p.166)


私の内省ではそのような状況、状態でも使わなくないが、人に使う方が多い。
ただ、そこまで可愛げのあるタイプには最近出会ってないような気がする。

スカタンだと、それほどマイナスな意味ではない。
ちょっととぼけたぐらいのミスに使うことが多い。

「スカ屁(p.167)」は使わない。すかしっ屁(スカシッペ)の方が使う。
直感的にすかしっ屁の方が、語形は関東方言のような気がする。

ただ、こういった直接的な表現は大阪弁の方が起こりやすいかと。
「透かす」の語幹+「屁」の「スカ屁」が、連用形+「屁」で促音が挿入された変化だろうか。

駄菓子屋の当てもんの話がp.167に出てくるが、ハズレくじのことをスカという。
これはあてはずれや期待はずれからの派生用法だろう。

外れた状況に対して「スカ」と言ってるのではなく、ハズレくじそのものを「スカ」というので。
「うわっ、スカ引いてしもた」のように。

「スカみたいな奴(p.168)」は派生語としてのスカを再び人に用いた用法。
どんな奴をこの例として用いたのかは以下の通り。


 あるときの正月、若い衆が年始回りにやってきた。中小メーカーの下っ端だろう。
 誰も知らない顔だった。
 ごくわかい男で、影のうすい、オドオドした若い衆である。彼は入口でモジモジしてオーバーを脱いだ。(中略)
 門口で真っ赤になってボソボソといい、蚊の鳴くような声で誰にも聞きとれない。みんな呆れて、じっと見ている。若い衆は泣き出しそうな顔でぺこんとお辞儀して、オーバーを抱えたまま店をとび出した。
「あれでも年始まわりかいな」
 とどっと、一同笑い、大将は、
「どこの若い衆や」
「○○アルミちゃいまっか」
「いや、××軽金属ときこえましたで」
「スカみたいな奴ちゃなあ」
とみなみな、腹を抱えて大笑いになった。(pp.169-171)


営業マンだと元気がいい方がいいんだろう。
でも、元気が良すぎるのは逆に疲れる。

芸人がテレビで元気よく張り芸をやってるのはいい。それは芸の一つだからおもしろい。
一方で、例えば職場で明るく元気にはしゃいでるのは、生理的に受け付けない。

子どもは多少諦めるが、大人だとできればかかわりを持ちたくない。
そういう大人は、子どもよりたちが悪い。

私にとっては、そういう奴もスカみたいな奴。スカタンよりスカみたいな奴の方がマイナスの度合いが強い。
そして、そのスカは空虚レベルではない。元気であっても、ただのはずれくじなので。

破約の用法としては「スカくらう」(p.171)。待ち合わせですっぽかされた時に使う。
私は今は使っていないが、十分に理解できる表現。

スカみたいな奴とは、できるだけスカくらわしたいと思うのは私だけ?
顔をあわせてスカみたいな気分になるのは、ストレスがたまるだけなので。



「スカ」のアクセントは、LH。
「スカタン」は、LLHL。

「スカ屁」は、LLH。
「すかしっ屁」は、LLHLL。

「スカ引いてしもた」は、LH HHHHLL。
「スカみたいな奴」は、LHLLLL HL。
「スカくらう」は、LH HHH。



この章終わり。





2017年4月17日 (月)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「あかめつる」を読んで その2

大阪弁の特徴は、大体において、三つある、と私は思っている。(p.164)


こういう指摘は興味深い。
正しいかどうかは別にして、直感的な記述というのは当たらずと雖も遠からずである。


一つは、自分のことをいうのに、他人風な言い廻しをすること。(p.164)
「ちょっと待てや、おい、ワシにも言わしたれや」(p.164)
「僕にも見せたってえな」(p.165)

二つめは、水をぶっかける所があることだ。
何にでも水をぶっかけて冷静にしてしまう。
「赤目吊って」と指摘されると、そうか、と内々反省して、一瞬ひるむ、そういう語を発明することが多い。(p.165)

その三は、即物的なことであろう。(p.165)


さて、今回は即物的な表現をとりあげることにする。
まずは「めめくそ」。

ちょっぴり、といえばいいものを、目々糞という。
「めめくそほどの金くれて、えらそうにぬかしよんねん」(p.165)


人によっては、「みみくそ」と言ってるかもしれない。
「めくそほどの金」では、しっくりこない。ここは「めめくそ」でないとマイナス感が出ない。

中腰になってしまう「屁っぴり腰」を「ババ垂れ腰」(p.166)と言ってたらしい。
下品な表現が好きな子どもならと思ったが、聞いた記憶がない。

直接的な言い廻しは、商用語でもあったようだ。
その方が話が弾むのかどうかは、商人でない私には分かりづらい。


「小便しよった、というと、商談成立したもんを水に流す、解約することです」(p.166)
「ババ掛けよった、これは品物だけ取り込んで代金渡さん、悪質なるをさす」(p.166)


まあ、汚いものというのから、マイナス方向に派生したんだろう。
現実の場面は想像したくないが、実際にこれをやってもしっくりくるような気がする。




「言わしたれや」のアクセントは、HHHHLL。
「見せたってえな」は、LLLLHLL。

「めめくそ」は、LLHL。「みみくそ」も同様にLLHL。
「めくそ」はLHL。

「へっぴりごし」は、LLLHLL。
「ばばたれごし」は、HHHHHL。
「ばばたれ」は、HHHL~LLHL。

「しょんべんしよった」は、HHHH HLLL。
「ばばかけよった」は、HH LHLLL。



その3につづく。







2017年4月 6日 (木)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「あかめつる」を読んで その1

「あかめつる」pp.162-172

この過疎ブログが大阪弁ちゃらんぽらん読後感に路線を変えて1年2か月が経つ。
今回、これはどうにもこうにもという語彙にあってしまい、どうしよと考えてるところ。

まず、形態素解析ができなかった。
「赤目 吊る」で、ようやく少しだけ想像できるようになった。

血相変えた状態(p.162)とある。
赤目で血走って吊り目やったら、だいぶやばい奴なんだが。

「不仲になる」は結果論で、「赤目を見せていがみ合ふ」が正しいとのこと。
正しいかどうかは別にして、後者が先で前者が派生であることは分かる。

「目+かね>眼鏡」「目+いぼ>めいぼ>(…>めば)」みたいな、分かりやすい語構造。
しかし、私の脳内に全く存在しなかった。ひとまず例文を理解していくしかない。


「えらい赤目吊ってボロクソにいいよんねん」(p.163)


これに対する田辺聖子さんの所感がいい。


目を血走らせてまなじりを吊り上げ、肩をいからしている状態を活写してあますところがない。しかも、そういう怱忙のあいだに、ちゃんと相手の目の色まで見届けているということで、余裕のあることだから、実兄描写におかしみが添う。あるいは、いきり立つ相手に、
「そない赤目吊っていわんでもよろしやないか」
となだめてかかるとき、ふと相手に、おのれをふり返らせる機会をも与える。(p.163)


傍から見てたらというだけで、当事者にそんな余裕はないと思う。
これについては、男女差による見解の違いだろう。


「赤目吊って働いたかて、月給上るやなし、……ボチボチにしとかな、あほらしわ」(p.163)

営業マンか、年度末の経理か、締切直前の設計か。
あるいは書類作成に追われてパソコンと格闘している社員か。

必死のパッチで働くのは時に必要だが、赤目吊ってたら血圧上がって仕方ない気がする。
でも、誰かが働かなければならない時はある。

亭主の好きな赤烏帽子。ブラック企業での理不尽な赤であるという皮肉な解釈ができる。
そしたら、ブラック企業には赤目吊ってるのが多いんだろうか。

いや、赤目を吊る前に、顔が青ざめているような気がする。




「あかめつる」のアクセントは、さんざん悩んだあげくLLHHH。
「赤目」がLLH、「吊る」がHHなんで、そうした。


「ボロクソ」はHHHH。
「必死のパッチ」はLLLH LLH。



その2につづく。





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