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2017年3月

2017年3月30日 (木)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「あもつき」を読んで その2

祖母は、外から買えると何々に金を使ったか、洟紙(はながみ)に、鉛筆をなめなめ、書いていたが、それがおかしかった。
「一、すこん 一、おかしん 一、まめさん 一、おまん 一、けつね」(p.157)

「すこん」は「酢こんぶ」、「おかしん」は「お菓子」、「まめさん」は「小さな塩豆」、「おまん」は「饅頭」、「けつね」は「きつねうどん」を指す。場面や文脈があれば、聞いて理解できる語彙だが、どれも使わない。

「まめさん」が「塩豆」を指すのは、私では容易に想像しにくい。
「けつねうろん」は河内なまりとあるが、「うどん」を「うろん」と言う以前に、私は「けつね」も使わない。

「シ」が「ヒ」になる、例えば「七(ヒチ)」「質屋(ヒチヤ)」は今でもそう言う時がある。
一方で、「キ」が「ケ」になるのは、おそらく使っていない。「ケ」で思いつくのは「けーへん」ぐらいか。

「来る」に打消しの「~へん」がついたら、「けーへん」と言う。「きーひん」は使わない。
よそ行きの大阪弁の時には、いわゆる新方言の「こーへん」を使うことがある。

「する」は「せーへん」。これを「しーひん」とは言わない。
ただ、「する」の場合は、「せぬ」なので「せ」で違和感がない。

「来る」は「来ぬ」だから、「けーへん」じゃなく「こーへん」が生じる。
しかし、これは「キ」が「ケ」ではない。だから、私の内省では「キ」が「ケ」になる語彙が思いつかない。


モチのことを祖母や曾祖母、掛人(かかりゅうど=居候)の老女などは「あも」といっていた。歯のぬけた老女達が「あもを沢山(ようけ)いただいて」などと笑い合う。(p.158)


この章のタイトル「あもつき」の「あも」がようやく登場。
私の脳内には全くなかった語彙で、これは聞いても容易に想像できない。

「あもつき」は「餅つき」のこと。
「正月きたら、あも搗いて……」という子守歌(p.160)があるそうだ。

さて、最後に近松の『関八州繋馬』に、以下の文言があるとのこと(p.161)。
「今宵はお寝間でしっぽりと、お二人のあもつき」

「もちつき」の意味だと分かりにくいが、こっちの例だと分かりやすい。
熊八中年[注]の「何となく、卑猥な語感でしたなあ」(p.160)も分からなくはない。




「はながみ」のアクセントはHHHH。
「すこん」はLHH~LLH。
「おかしん」はLHLL。「お菓子」はLHL。
「まめさん」はLHLL。「豆」はLH。
「おまん」はLHL。「饅頭」はHLLL。
「けつね」はLLH。「けつねうどん」はLLLHLL。

「あも」は、私の内省ではLH。
知らない語彙でも私のアクセントだとどうかということについて、これまで記してきたが、「あも」はゆらぐ。HHでもいいかもしれない。HLは違う気がする。
「あもつき」は、HHHL。「もちつき」がHHHLなんで、そこからの類推でそう言う。


追記
・京の御所ことばとして挙がっている例(p.158)
「お豆」LHL。
「おながもの」はうどんのこと。LLLLH。
「いともの」は素麺のこと。LLLH。LHLLだと「糸でできた製品」となる。
「おしわもの」は梅干しのこと。LLLLH。

・大阪弁で「うまくない」というのを「もみない」といい(p.159)
私は使わない。
「もみない」はLHLL。
「うまくない」は「LHL LH」
「うもない」はLH LH。「うもない」から類推するとLHLHだが、「もみない」はLHLLの方がしっくりくる。


[注]熊八中年 本文にしばしば登場する野卑で下ネタ好きな男性。







この章終わり。





2017年3月20日 (月)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「あもつき」を読んで その1

「あもつき」pp.151-161

今回は食物の名称を考えよう(p.151)とあるので、そうする。
今回も古い言い方が多く、なじみがない言葉が多い。

「おかいさん(p.152)」については、以前にも書いたことがあるが、使わなくはない。
「おかゆさん」や「おかゆ」も使っているが、ぞんざいに言えばたぶんそう言っている。


なお、紀州では茶粥のことをおかいさんというとのこと。
派生というべきか、拡大用法というべきか。

「おみい(p.153)」は、これだけではさっぱり想像がつかない。
「おみみ>おみい」という変化なんだが、これでもさっぱり想像がつかない。

「浪速方言大番附」では「おみや」、「御所ことば」では「おみみ」、「日本国語大辞典」では「おみい(御味)」が掲載されている(p.154-155)ようだ。「omiya>omimi>omii」か、「omimi>omiya, omimi>omimi」という2つの枝分かれ変化か迷うところである。

全くもって蛇足になるが、「おみみ>おみい」は、「すいません」嫌いへの抗弁となる。
音韻的には子音となる鼻音の脱落なので。
「すいません」ならmの脱落、「すんません」ならiの脱落。
正しい日本語好きでも、音便まで批判するわけではないだろうと思いたい。
「すみません」代わりに「すいません」と言うと、「タバコか」みたいな返しがあると聞いたことがあるが、これは「済みません」と「吸いません」のアクセントが違うのでセンスがない。

「おせん(p.156)」が煎餅だということは分かるが、甘い煎餅だとは理解していなかった。
となると、私の内省ではなんちゃって理解語彙となる。

「おかき(p.156)」が塩煎餅というのだが、これも若干違和感がある。
私の内省では煎餅は平たく、おかきは棒状なので。

「エー、おせんにキャラメル、おかきにあられ……(p.156)」
昭和10年代のカツドウ小屋(映画館)で売り子さんがいう文言。

そうなると、前者が甘いもので、後者がしょっぱいものか。
なお、私の内省では「あられ」は小さい球状のものである。




「おかいさん」のアクセントは、LLLHH。
「おかゆさん」もLLLHH。「おかゆ」はLLH。

「おみい」はLHL。「おみみ」も「おみや」も同様にLHL。

「済みません」はLLLLH。「すんません」も「すいません」もLLLLH。
「すんまへん」は摂津弁じゃない気がする。「すいまへん」は私の内省ではあってもいいがかなり違和感がある。

「吸いません」はHHHHH。
共通語だと「すみません」も「吸いません」もLHHHLで同じなので、そういうネタになるのか。

「おせん」はLHL。「汚染」ならHHH。
「おかき」はLHL。「あられ」はHHH。



その2につづく。




2017年3月 8日 (水)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「あんだらめ」を読んで その3

その1に「あんだらめ」は「あほんだらめ」の「ほ」の弱化と書いた。
ただ、『大辞林』を見てると、「あの道楽(ドラ)」の縮約形も考えられる。

「 -めには拳一つあてずほたえさせ/浄瑠璃・油地獄 中」
とあるので、割と古くから「あんだらめ」は使われているようだ。

また、「阿呆陀羅経」という滑稽話が江戸中期にあるので「あほ(ん)だら」が江戸時代にあったとも考えられる。
それだと、弱化説も否定できない。

共時的に考えれば「ほ」の弱化ですむが、通時的に考えるとどちらか特定しきれない。
その当時の弱化に関する文献資料でもあれば分かるのだが。



さて、p.146に罵詈讒謗の言葉として、「~くさる」「~さらす」「~けつかる」「~こます」が挙げられている。
例をもとに内省してみたい。

「なに吠たえくさる、このあま(p.146)」は理解できるが使わない。
「なにしくさってる」が基本用法だろうが、私の内省ではなじみがない。

「何さらしてけつかんねん(p.147)」は「~さらす」と「~けつかる」の2つが入ってる。
子どもの頃、「けつかる」という語彙が頭になかったので、「何言うてけつかんでんねん」と言っていた。


「出ていきさらせ」
と男は女にいい、女が荷物をまとめて出ようとすると、
「このドアホ、どこへいきさらす」
と引きとめてやらず、女はマゴマゴし、男はさらに
「何をボヤボヤしくさる、さっさとメシでもたきやがれ」
などどいうのである。(p.147)


さすが田辺聖子さん。展開が面白い。昭和の男と女って感じが際立ってる。
私はもはや平成人間なので、共感できても使うことはないだろう。

「いうてこましたった(p.147)」「どついてこました(p.148)」は私は聞いたことがない。
「~こます」は「いてこます」がすぐに思い浮かぶぐらい。

ただ、喧嘩に向かない私は、相手をいてこますことはできない。
この場合の「~こます」は「完膚なきまでやっつける(p.149)」があってる。

この「こます」は、「張り手をかます」の「かます」の音韻変化ではないだろうか。
暴力的に相手に仕掛けるという意味合いでなら、合っている。

「はったりをかます」の場合、暴力的ではない。
何か仕掛けてはいるが、だまして落とす方向に向かっている。

なので、「スケコマシ(p.149)」は、「かます>こます」が後部要素であろう。
前部要素は「好き>すけ」ではないかと考えている。

「すけべ」の「すけ」も「好き」から来ているので、そう考えることができるだろう。
「(女に)好きをかます」ことで、たらしこんでいるのではないかと思う。

この解釈が「すけこまし」の語源として適切かどうかは今後の検証が必要であるが、そんなにおかしいとは思っていない。




「吠たえくさる」のアクセントは、HHHHHH。
「しくさってる」は、HHHHHH。

「なに さらして けつかんねん」は、LH HHHH HLLLLL。
「け」の後に下がり目。
なので、「言うて けつかんねん」は、HHH HLLLLL。
「言うて けつ かんでんねん」は、HHH HL LLHLLL。

「出ていきさらせ」は、HHHHHHL。
「いきさらす」は、HHHHH。
終止形は高平、命令形は「ら」の後に下がり目。

「いてこます」は、HHHHH。
「張り手」はLLH、「はったり」はLLLH。
「かます」は、HHH。
「スケコマシ」は、LLLLH。

本文でふれてないが、「尻」はHL、「おいど(p.148)」はLHL。


この章、終わり。








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