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2017年2月

2017年2月24日 (金)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「あんだらめ」を読んで その2

「ドアホ」は「アホ」を卑しめ貶めた罵詈用語、侮蔑用語(p.143)である。
単純に強調とは言い切れず、元の意味のプラス要素を消し去ってしまうのが「ド」である。


「ドアホ」というと、「アホ」というコトバの持っているやわらかみは、全く失われる。「ド」というのは激越で下賤で、はなはだ品格のない言葉、かりにも教養と見識ある紳士淑女は使ってはならないとされている。(p.143)


私に品格や見識があるかは別にして、東京に来てからは使う頻度が減っている。
そのニュアンスが伝わらないから、せいぜい「アホか」ぐらいでとどめている。

「アホ」と「バカ」が大阪と東京では逆と言うが、都内で大阪弁の「アホ」は諦められつつある。
都内で大阪人の悪口はあっちこっちで聞くが、諦めの声もないわけではない。

一方で、大阪で東京弁の「バカ」はまだ受け入れられているとは思えない。
これは私も感覚的にそうであり、東京に住んでいてもまだ体が受け付けない。

ただ、今のところ、私に「バカ」と言ってくる人間は周りにいない。
だから、過ごしていけるのかもしれない。

「ド」がつく言葉はまだまだあり、「ドスベタ」「ドタフク」(p.143)が挙げられている。
これらは女性に対しての専用の侮蔑用語と言える。

さすがに女性に「すべた」も「お多福」も言わないので、これらは理解できるが使っていない。
どちらも醜い女を指すが、「すべた」はブサイク、売女、不良などに、「お多福」はふっくらした顔に言う。

「お多福」はかつては美人だったが、時代によって解釈が変わっている。
なお、「ドタフク」は「ド+オタフク→ドオタフク>ドタフク」と「オ」が融合した語形になっている。

「すべた」はスペイン語のespadaから来ているとのこと。カルタの零点札から派生した語なんだそうだ。
語源というものはあまり信用してないので、何とも言えない。「ずぼら」の変化形の気がするのだが。

「ド根性」は、もともと「根性が悪い」であって、「性根がある」「気骨稜々」ではなかった(p.144)とのこと。
我々世代は「ど根性ガエル」の印象が強いので、前者の意味では使わない。

「ドケチ」「ドスケベ」(p.144)は、何の抵抗もなく使える。
ただ、気のおけない相手でないと、あとあとめんどくさそうだが。

「愚妻」は「愚かな妻」ではなく、「愚かな夫の妻」なんだが、誤解されることが多い。
「ド嬶(どかか)」(p.144)などと言ってしまうと、さらなる誤解を生むかもしれない。

「おのれのドタマ、かち割ったろか」(p.144)は、ある意味定型句となっている。
「ド+アタマ→ドアタマ>ドタマ」といった、頭のどぎつい言い方。

私はこの定型句は使うことはない。
新喜劇で出てきたら笑えるが、実生活だと笑えない。

むやみに大きい体格のことを「ドンガラ」(p.144)と言うようだ。
これは知らない。「ドタマ」と同様にただただ悪い意味で使っているようだ。

「カラ」は「柄」で人を指し、図体や体格も指す。
「やから」「はらから」の「から」と同じ語基である。

最近テレビで悪い人のことを「やから」と言ってるが、アクセントがLHLが多い。
私はHHHなんだが。またテレビで言われている用法は私は使わない。

私は連体修飾語がなければ使えないので、単独である人を指して「やから」とは言えない。
3拍侮蔑語はLHLになりやすいので、それに準じたアクセントになったんだろうか。

なお、これらの「ド」は「超ド級」の「ド」とは異なる。
「超弩級」はイギリスの戦艦「ドレッドノート(dreadnought)」の頭文字「ド」への当て字。

だから意味は「どでかい」に近くなるが、大阪弁の「ド」とは関係ない。




「ドアホ」のアクセントはHLL。
「アホ」はLH、「バカ」はHL。

「ドスベタ」はLHLL、「ドタフク」はLHLL。
「スベタ」はLHL、「おたふく」はLHLL。

「ド根性」はLHLLL、「根性」はLHLL。

「愚妻」はLLH、「ド嬶」はLHL。

「ドケチ」はLHL、「ドスケベ」はLLHL。
「ケチ」はLH、「スケベ」はLHL。

「ドタマ」はLHL、「頭」はHLL。

「ドンガラ」はLLLH。
「やから」はHHH、「はらから」はHHHH。

「超ド級」はHHHLL。
「どでかい」はLLHH。



その3につづく。









2017年2月 4日 (土)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「あんだらめ」を読んで その1

「あんだらめ」pp.140-150

これは大阪弁感覚があればすぐに分かるが、そうでなければピンと来ないかも。
「あ」と「ん」の間に「ほ」を入れればわかるかと。

ぞんざいに言った時に、「ほ」が弱化して脱落してしまった言い方。
これは大阪弁だから落ちるというわけではなく、個人差がある。

ということで、この章は罵詈讒謗をあらわすことばの特集となる。
こういうのは学術ものではあまり書かれてないんで、こういうブログの方が気楽。


ケンカの時に相手を罵る語としては、
「おんどれ」「われ」
「ガキ」
「ド畜生」
などあり、相手が若いときは
「小便タレ」
などともいう。 (p.142)


「おんどれ」「われ」は確かに大阪弁だが、摂津弁ではないような気がする。
また、ガラが悪い、喧嘩が好きだという性格でないと、使わないと思う。

「おんどれ」は「おのれ>おんどれ」という変化か。
「の>ん」はよくある変化だが、そこに「ど」が入るのが面白い。

となると「おのれ>おどれ>おんどれ」かもしれない。「の>ど」という変化については可能性としてはあるけど、他に類例を見つけないとそうにちがいないと断言することはできない。

「われ」は自分自身のことを指すわけでなく、相手のことを指す。
「自分」「われ」を2人称として使う大阪弁話者は、一定数いるのは確か。

「われ、なんて名前や」はあまりにガラが悪いが、「自分、なんて名前?」というのは日常会話として使っている人がいる。
私はそう言わないが、他人が使っていても何の違和感もない。

「ド畜生」は想像はできるのだが、実際に聞いたことはない。
まあ、そういう現場にいたら、私はのびるどころか死んでしまいそうなんで。

さて、最後の「小便タレ」、これは「しょんべんたれ」と言う。
これは、今の私の年齢ぐらいで青二才相手に使うのが、ちょうどいいのかも。

だからといって、学生には使えないが。よほど気のおけない学生であっても。
まあ、気のおけないのんは、こんなセリフを吐かせへんやろうけど。

ちなみに、「しょんべんたれ」は男相手に使う。女相手なら「しょんべんくさい」。
なぜなのかは分からないがそういう区別はある。

実際に小便の臭いがするわけではない。
まだおねしょしてるぐらいの小さい子を誇張して使っている。

「小便臭い」女の例として、「あまりにも若くてまだ色気がたらん憾みがあり(p.143)」と書かれていた。
例えば誰というのは、さすがに控えておく。

このニュアンスが東京で伝わらないのは言うまでもない。
だから、私が使う機会はなさそうである。

さすがに職場では言えないし、今どきよっぽど気のおけない関係でもネタでしか言えない。
これを真顔で言える時代でないことは、一応理解している。

だから、「小便くさい」は使わない。
「小便タレ」と言ってやりたい奴は確実にいるが、今のところ大人のたしなみを守っている。





「おんどれ」のアクセントはLLLH。
「われ」はLH。HLでは迫力もくそもない。
「ガキ」もLH。

ついでながら蘊蓄を垂れると大阪弁の2モーラの卑罵語は基本的にLHが多い。
「あほ」「ぼけ」「かす」「はげ」「ちび」「でぶ」などなど。
ちなみに「ばか」はHL。やはりこの語は大阪弁になじまない。

「ド畜生」はLHLLL。

「しょんべんたれ」はHHHHHL。
「しょんべんくさい」はHHHHHLL。





その2につづく。





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