2018年2月 5日 (月)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「サン」と「ハン」を読んで その3

アイウエオ五十音で、イ列のイ、キ、シ、チ、ニ、ヒ、ミ、リ。ウ列のウ、ク、ス、ツ、ヌ、フ、ム、ユ、ル。ハ行のハ、ヘ、ホ。ア行のオ。それから、ン(p.216)


「ハン」の上にあると言いにくいリスト。私の内省とはかなり異なる。
そりゃそうである。「ハン」が使用語彙ではないからである。

だから、その自然さの判断が、ずっと大阪にいる人間より劣っているんだろう。
そして、「ハン」が古くさい感じがして使おうと思わないせいでもある。


「坊ンサン」というが、「坊ンハン」とはいいにくい。「奥サン」といっても「奥ハン」はない。
しかし、「学生ハン」はある。(p.216)


「坊ンサン」「奥ハン」と言わないのは、私もそう思う。
でも、「学生ハン」に若干違和感を感じる。

「婿ハン」にも違和感がある。でも、「嫁はん」だけは使っている。
バツイチなので今はいないが、親愛感があったのは事実である。

「ハン」「サン」以外に「ヤン」(p.217)がある。
田端義夫のバタヤンが有名である。

今はもうないが、近所にあったあだんのマスターが、なじみの客を「ヤン」か「チャン」で呼んでいた。
島んちゅだが、大阪にいた頃があったのが影響しているんだろう。

でも、私から見て年上に「ヤン」や「チャン」は使いにくい。
だからといって、通称が決まってるのに本名やサンでも呼びにくい。

その中で、カワバタさんに対するバタヤンだけは、呼びやすかった。
バタヤンという一くくりで有名な表現になっていたからだろう。


「ヤン」は「ハン」より、もひとつ、軽く扱われ、そのくせ、親しみの度合いは反対に深くなる。(p.218)


首肯できる。そして、「ハン」や「ヤン」は、目上の人には使いにくい。
近しい関係で歳が若い人にしか使いにくい。

最後に「ツァン」の話が書いてあったが、「ツァン」は私の内省では大阪弁とは思えない。
銭形のとっつぁん以外に使ったことがないからである。


「坊ンサン」のアクセントは、LLLH。
「奥サン」は、HLLL。

「学生ハン」は、LLLLLH。「学生」は、LLLH。
「婿ハン」は、LHLL.。「婿」は、LH。
「嫁ハン」は、HHHH。「嫁」は、HH。

「バタヤン」は、LHLL。
「田端」は、HLL。「カワバタ」は、LLLH。

「とっつぁん」は、LLHL。
「銭形」は、LHLL。


この章終わり。



2018年2月 3日 (土)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「サン」と「ハン」を読んで その2

「サン」と「ハン」が子音調和に基づくと書いたが、例外が多い。
音韻規則だけでは説明できないところにややこしさがある。

福田サン、田中サンは福田ハン、田中サン(p.213)と言い換えられる。
人の名字や名前なら置換してもかまわないので、中井ハン、大江ハンでも私は違和感がない。

ただ、私にとっては「嫁はん」以外は、使用語彙ではない。
だから、使うかどうかは別にして、聞いて違和感がないということになる。

皇族に「ハン」が使えないように、神仏にも「ハン」は使えない(p.213)。
「神ハン」「仏ハン」は信仰するか否かを抜きにしても、いくらなんでも敬意がなさ過ぎて無理。


「戎サン(エベッサン)」を「エビスハン」とよばない。「天神サン」「生國魂(イクタマ)サン」「弁天サン」「不動サン」みなしかりである。「住吉サン(スミヨッサン)」「愛染(アイゼン)サン」など、まちがっても転訛しない。(p.213)


「旦那サン」を「旦那ハン」と言わない(p.213)というのは、少し話が変わってくる。
縮約形の「ダンサン」も「ダンハン」とは言わない(p.214)。

ただ、本人に直接呼びかけるのではなく、裏で何かをいう時には使ってもかまわないと考えられる。
この点は、香村菊雄「船場物語」の引用で同様の指摘がある。

「御寮人(ゴリョン)サン」「お家(オエ)サン」「イトサン」も本人に呼びかける時は「ハン」にはならない(p.214)。
なお、「お家ハン」ならびに「イトハン」を「イトチャン」(p.214)と言うのは、はじめて知った。



「福田」のアクセントは、LLH。
「福田さん」は、LLLHH。「福田はん」は、LLLLH。

「田中」のアクセントは、LHL~LLH。
「田中さん」は、LHLLL~LLLLH。「田中はん」は、LHLLL~LLLLH。

「中井」は、LLH。
「大江」は、LLH。

「神」は、HL。「神さん」は、HLLL。
「仏」は、HHH。「仏さん」は、HHHHH。

「戎」は、HHH。「戎サン(エベッサン)」は、HHHHH。
「天神」は、LLLH。「天神サン」は、LLLLLH。
「生國魂」は、LLLH。「生國魂(イクタマ)サン」は、LLLLLH。
「弁天」は、HHHH。「弁天サン」は、HHHHHH。
「不動」は、HLL。「不動サン」は、HLLLL。
「住吉」は、HLLL。「住吉サン(スミヨッサン)」は、HLLLLL。
「愛染」は、HHHH。「愛染(アイゼン)サン」は、HHHHHH。

「旦那」は、LLH。「旦那さん」は、LLLLH。「だんさん」は、LLLH。

「御寮人(ゴリョン)サン」は、HLLLL。「ゴリョーハン」は、HLLLL。
「お家(オエ)サン」は、LHLL。
「イトサン」は、LHLL。「イトハン」は、LHLL。「イトチャン」は、LHLL。



その3につづく。



2018年1月 1日 (月)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「サン」と「ハン」を読んで その1

「「サン」と「ハン」」pp.209-219

以前に少し「~はん」について書いたことがある。

そこで、私は「~はん」の許容範囲が広いと書いた。
語尾がア段、オ段なら「はん」、それ以外は「さん」という制約が私にはない。

この制約が働く人は、子音調和が働いていると推定する。
かいつまんで言うと、前に来るのが前舌母音なら「さん」、後舌母音なら「はん」ということである。

それから改めて考えてみたのだが、私が使う「~はん」は「おばはん」と「嫁はん」だけ。
そうやって考えると、実質的にはほぼ使用語彙ではないと言える。

「はん」は京都方言の印象が強い。
大阪方言には、その影響を受けて若干入ってきたにすぎないと思っている。

「さま>さん>はん」という音韻変化だろうが、私は「さま」は口語では皇族以外に使わない。
それでさえ、大阪方言というよりは、結構共通語寄りのよそいきの大阪方言だと思っている。

皇族以外に使うと、よそよそしさしか感じないからである。
これは私の内省に過ぎないのだが、ここは主観ブログなので。

京都方言には「サマ」がなく、御所言葉では「サン」しかないという説(p.210)がある。
「禁中サン。皇后サン。大宮サン」「東宮サン」「春ノ宮サン」「御息所サン」(p.210)など。

他に「明治天皇サン」「皇太子サン」「殿サン」「御簾中サン」(pp.211-212)なども。
さすがに私はそこまで親しみを込めて呼ぶ度胸はない。

そして、間違っても皇族に大して「はん」と呼ぶことはない。
「はん」は、若干卑しめた言い方だというのが、私の内省である。



「おばはん」のアクセントは、HHHH。
「嫁はん」は、HHHH。

「禁中サン」は、HLLLLL。
「皇后サン」は、HHHLLL。
「大宮サン」は、HHHHHH。
「東宮サン」は、HHHLLL。
「春ノ宮サン」は、HHHHHHH。
「御息所(みやすんどころ)サン」は、HHHHHHHHH。

「明治天皇サン」は、HHHLLHLLL。
「皇太子サン」は、LLHLLLL。
「殿サン」は、HHHH。
「御簾中(ごれんちゅう)サン」は、HHHHHHH。



その2につづく。



2017年12月 7日 (木)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「タコツル」を読んで その5

さて、しばらくあいてしまったが、その5にきてようやく「タコツル」の話。
私もこの言葉が気になってしょうがなかった。

全く知らない語彙なんだが、単純解釈なら「蛸+釣る (or 吊る)」。
これが派生してどういう意味になるのかがさっぱり分からないんで。


「タコツル、というのがありましたな」
熊八中年はいった。私も知っているが、
「あれは大阪弁ではないでしょう。よそでも使うかしら」
「それに、近頃ですなあ。僕らの子供時分は、あまり聞かなんだ」
蛸を釣られる、というのは、叱られる、という隠語であるが、なぜそういうのか分からない。(p.206)


坊主を見下して「タコ」というのは分かる。p.207にその話があるが、これは誰もが思いつくだろう。
ナニコラタココラ」は坊主相手ではないのにもめ続ける長州力と橋本真也のほほえましい罵倒合戦。

仏教系の中学校をタコ中(p.207)とは、いかにも昭和っぽい。
昔の中学は男は坊主が多かったので、あっちこっちにタコ中か。

うちはそうではなかったが、強制坊主や強制三つ編みが多発していた昭和40年代。
強制黒髪までいくと笑えない。

閑話休題。


牧村史陽説:大阪第四師団管下の兵隊の隠語。
前田勇説:兵舎の窓から兵隊が、屋台のおでん屋の煮蛸を釣り上げるところをみつかって、叱られたから。
その他:叱られたものが茹で蛸をつるしたように赤くなるから。
 子どもの頭を、両手ではさんで宙に釣り上げたから。 (pp.206-207)


兵隊さんの隠語がそれっぽいが、真相は分からない。
また、著者たちが大阪弁?と疑っているので、余計に分からない。


今回の怒罵のコトバでは、男性専用はなくなりつつあるところに、今日的な意義がある。それゆえ、あえて採録した。(pp.207-208)


いろんな意味で男女同権に、昭和40年代はなりつつあったのか。
しかし、「いわしたろか」「なにゆうてけつかんねん」「いてこますぞ」という女性が、今現在稀少であることを望んでいる。



「タコツル」のアクセントは、HHHH。
「タコ」はHL、「釣る」はHH。「吊る」もHH。

「坊主」は、LHL。
「タコ中」は、LLLH。



この章おわり。





2017年11月 4日 (土)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「タコツル」を読んで その4

この章は、卑罵語が多くて面白い。
こういう機会でもなければ、こういう語彙は取り扱いにくいので。


ケンカが、口だけで終らなくなり、暴力が用いられると、更にいろんな表現に分かれる。
撲る、叩く、こづく、のほかに、
「どつく」
「どやす」
「しばく」
「はつる」
などとあるようである。(p.202)


「ぶつ」を使わない点では、私も同感である。
この中では、「はつる」は知らない。

私の内省では「なぐる」はグー、「たたく」はパー。
「こづく」は「たたく」よりは弱い。そして、チョキではなく、グーでもパーでも指先でもよく、肩やひじでもよい。

「どつく」は、「なぐる」よりは激しい。
「こづく」が「こ(指小辞)+突く」で、「どつく」が「ド+突く」と推測。[注1]

私の内省では、「どつく」は基本的にグーのみ。
殴る、蹴る、叩くが入り混じったのが「しばく」。「しばく」は、武器を使ってもかまわない。

だから、ボクシングなら「どついたろか」「どつきまわすぞ」が似合う。
もちろん、全ての選手がそうではないが。

「どついたろか」より「どつきまわしたろか」の方が、強めた表現。
「どついてくるりと一回転させることではない(p.203)」は的確な説明である。

「どつきまわすぞ」の方が、「どつきまわしたろか」よりは優しい。
男は実際にするかしないかは別にして、相手に何をしてんねんと伝えたい時にしばしば使う。

なお、「しばきまわす」は言えるが、「なぐりまわす」「たたきまわす」とは言えない。
「しばきまわすぞ」も、会話の中での軽いクッションとして使う。

「どやす」は、私の内省では殴る、叩くの意味合いはない。
口頭できつめに叱るが、しっくりくる。

本文にも「雷を落とす、こっぴどく叱られて油をしぼられる(p.204)」「課長にごっつう、どやされた(p.204)」が記されているが、私の内省ではこちらが一番目の意味になっている。

「はつる」は全く知らないので、引用に頼る。
私の脳内に存在しない語彙なので。


「はつる」もよく使うが、これはもとは皮をはぐことからきたらしく、上前をはねるとか、口銭をとる[注2]とか、という意味にも使う。そのせいでか、
「あたま、はつッたった」
というのは使うが、「尻をはつった」とはいわない。尻は「はたく」である。(p.205)


p.205で「いわす」が加えられる。「いわしたろか」は、必ずしも暴力ではない。
共通語だと、こらしめるが近いが、もう少しやっつける感が強い。




「なぐる」のアクセントは、HHH。
「たたく」は、HHH。「こづく」は、HHH。「ぶつ」は、LH。

「どつく」は、HHH。
「どついたろか」は、HHHHHL。
「どつきまわすぞ」は、HHHHHHL。
「どつきまわしたろか」は、HHHHHHHHL。

「しばく」は、HHH。
「しばきまわす」は、HHHHHH。

「どやす」は、HHH。
「どやされた」は、HHHLL。

「はつる」は推測だが、HHH.。
「はたく」は、HHH。

「いわす」は、HHH。
「いわしたろか」は、HHHHHL。




その5につづく。



[注1] 牧村史陽『大阪方言事典』では、「胴突く」説。

[注2] こうせん:仲介手数料




2017年10月23日 (月)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「タコツル」を読んで その3

接頭語には「ド……」をつけたらよいとすると、これに対応して接尾語には、
「くさる」
「さらす」
「けつかる」
「こます」
などというのがあり、すべて動詞活用形下につけて活用すると、怒罵とみに生彩を帯びて、輝やかしくなる。(p.199)

この章は、とにかく卑罵語が多くて、懐かしい。
方言の卑罵語は、その地域でしか使わないのが通常であろうから。

「くさる」の例文はないのだが、「~しくさって」が多いか。
共通語に訳すると「しやがって」だが、迫力がなくなる。

「やがる」は江戸っ子も使うが、大阪弁の「さらす」は一段と語意が強い(p.199)とのこと。
「何しやがる」よりは、「何さらすねん」の方が迫力があり(p.199)、間違いなくガラが悪い。

なお、「何さらすねん」は「何さらしとんねん」「何さらしてんねん」というように「~とる」「~ている」で言うこともできる。
「何しやがっている」は、私の内省ではありえない。

「けつかる」は「何ぬかしてけつかる」(p.199)が例示されている。
私はこの基本形を聞いたことがなく、「何ぬかしてけつかんねん」が最もなじむ。

古くは「けつかる」で、「けッかる」は近代風とのこと(p.200)。
ただ私は詰まって言わないので、「なンかッさらッけッかるねン!」(p。200)を聞いてもすぐには理解できない。

この例では、「さらす+けつかる」の構造になっている。
「何しくさってけつかんねん」のように「くさる+けつかる」は言えるが、「こます+けつかる」は無理。

「こます」は自分のことをいうとある(p.200)が、違和感がある。
「いうてこましたった」(p.200)は私は知らない。

「こます」で思い浮かぶのは、「いてこます」で、おそらく「いうてこます」の縮約形だろう。
共通語に訳すると、「やってしまうぞ」なんだが、やはり迫力がない。


「くさる」のアクセントは、HHH。
「しくさって」は、HHHHH。

「さらす」は、HHH。
「さらすねん」は、HHHLL。
「さらしてんねん」は、HHHHHLL。

「けつかる」は、HLLL。
「けつかんねん」は、HLLLLL。

「こます」は、HHH。
「いてこます」は、HHHHH。


その4につづく。




2017年10月 4日 (水)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「タコツル」を読んで その2

その他の「ド+」をみてみたい。
ド美人、ドイケメンというように、基本的にプラスな語彙にはつかない。

だからといって、ドデブ、ドブタ、ドチビ、ドノッポ、ドハゲは言わない。
クソデブ、クソブタ、クソチビ、クソノッポ、クソハゲなら言えるのだが。

「ド根性」は、我々世代では『ド根性ガエル』で有名だが、ド根性はもとは大阪弁。
近松門左衛門が使っていたことからもうかがえる。

「ドツボ」は「土壺」ではなく、「ド+つぼだと私は思っている。
ここでの壺は容器ではなく、滝つぼの「つぼ」のようにくぼんだところ。

ドツボは肥溜。ドツボにはまるは、肥溜に落ちるぐらいひどいことになるということ。
だから、ツボにドがついて罵言にしたのだと思っている。

「どつく」の「ど」も「ド」ではなかろうかという気がする。
「奴を突く」で「どつく」というのは、こじつけ感がある。

最下位をあらわす「どべ」の「ど」は「ド」であろう。
ベベ系語彙の「べ」に「ド」がついた形。

私はベベよりベッタがなじむ。ベベタは、なんか泥臭い。
人によっては「どんべ」とも。なんか泥臭い。

「どんくさい」は「ド+くさい」としたいところだが、「く」の前で「どん」となる音韻論的根拠が乏しい。
「鈍臭い」と表記するのは違和感があるが、これは「ド」ではないのかも。

「どぐされ」というのが、ふと頭に浮かんだ。
90年代半ばのフジテレビの深夜番組で、子供向けヒーローの主題歌なのに「♪どぐされげどーを たおすため」みたいな歌詞だったのを思い出した。

ただ、これは大阪弁ぽくはない。『どぐされ球団』の作者は長崎出身。
『リーガルハイ』の古美門研介は鹿児島出身。だから、九州方言だと推測。

最後に、今さらながら「超ド級」の「ド」は卑罵語ではなく、ドレッドノートをあらわす「弩」。



「ド美人」のアクセントは、LHLL。「美人」は、HHH。
「ドイケメン」は、LHLLL。「イケメン」はLLHH。

以降、言わない語彙は割愛。


「デブ」は、LH。「クソデブ」は、HHHH。
「ブタ」は、LH。「クソブタ」は、HHHH。
「チビ」は、LH。「クソチビ」は、HHHH。
「ノッポ」は、HLL。「クソノッポ」は、HHHLL。
「ハゲ」は、LH。「クソハゲ」は、HHHH。

「ド根性」は、LHLLL。「根性」は、LHLL。

「ドツボ」は、LHL。「つぼ」は、HH。

「どつく」は、HHH。「突く」は、LH。

「どべ」は、LH。「どんべ」は、LHL。
「ベッタ」は、LLH。「ベベ」は、LH。「ベベタ」は、LHL。

「どんくさい」は、HHHLL。「くさい」は、HLL。

「どくされ」は、LLLH。

「超弩級」は、HHHLL。

それから「ド阪神(p.198)」は、LHLLL。「ドタヌキ(p.198)」は、LHLL。

「ド+」のアクセントは、低起式で語頭から2拍目の後ろに下がり目だが、例外は多い。
「クソ+」のアクセントは、高起式で後項の下がり目から下がる。


その3につづく。



『大阪弁ちゃらんぽらん』「タコツル」を読んで その1

「タコツル」pp.197-208

ドあほ、ド畜生、ド餓鬼、ド嬶、ド盗人、ドタフク、ドタマ、ド助平… (pp.197-198)

ドをつけられる言葉に世代差あるいは個人差がある。
この中でも使うものとそうでないものが。

ドあほは使う。ド馬鹿は言わない。ドボケも言わない。
クソバカ、クソボケとは言えるが、クソアホは言えない。

なお、アホは坂田利夫さんと藤山寛美さん。
ドあほうは、初代桂春団治さんと藤村甲子園。

ド畜生は使ったことがない。これは言ってもおかしく感じない表現。
畜生よりひどい奴と出会ってないからか。

ド餓鬼も使わない。
クソガキよりかわいげのない奴がいれば使うかもしれないが、「ドガ」という濁音連続が気になる。

ド嬶(かか)も使わない。ド父もド母もド兄もド姉も言えない。
クソジジイ、クソババアは言えるが、クソトーチャンには違和感がある。

ド盗人も使わない。ド泥棒よりは、ド盗人か。面白い。
三億円事件の犯人が該当するのか、あるいは強盗殺人事件の犯人か。

いずれにせよ、そんな可愛げのあるものではない。
会社や店や家の金をくすねてとんだ奴が、ド盗人のレベルか。

ドタフクは、お多福顔をより罵った表現。この本を読んで覚えた。
おたふくを美人と捉えるか、ブスと捉えるかには個人差がある。

私は、おたふくを罵詈雑言に使えないので、ブサイコかブス。
ドをつけるなら、ドブス。クソブスは微妙。最近は使う相手がいない。

ドタマは、ド+アタマの縮約形。理解はできるが、使う機会はかなり少ない。
「ドタマかちわったろか」といった用例がある。「ドタマ悪いんか」は、内省では微妙。

ド助平は、ドスケベーではなく、ドスケベ。私は末尾は伸ばさない。
ええ歳こいた大人が、そういう話で盛り上がる機会はほとんどなくなった。

だから、誰がドスケベなのか、分かりにくくなっている。
ドスケベは行動規制ができていれば、知識人と言えるんだが。



「タコツル」のアクセントは、まだ語構成が分からないので、保留。

「ドアホ」は、HLL。
「アホ」は、LH。「バカ」は、HL。「ボケ」は、LH。(お笑いのボケはHL)
「クソバカ」は、LLHL。「クソボケ」は、LLLH。
「どあほう」は、LLHH~HLLL。

「ド畜生」は、LHLLL。「チクショー」は、LHLL

「ド餓鬼」は、LLH。
「ガキ」は、LH。「クソガキ」は、LLLH。

「ド嬶」は、LLHL。「かかあ」は、LHL。
「クソジジー」は、HHHHL。「じじい」は、LHL。
「クソババー」は、HHHHL。「ばばあ」は、LHL。

「ド盗人」は、LLHLL~LLHHL。
「ぬすっと」は、HHLL~HHHL。「どろぼう」は、HHHH。

「ドタフク」は、LHLL。「オタフク」は、LHLL。
「ブサイコ」は、HLLL。「ブス」は、LH。「ドブス」は、LLH。

「ドタマ」は、LHL。「アタマ」は、LHL。

「ドスケベ」は、LLHL。「スケベ」は、LHL。




その2につづく




2017年9月 2日 (土)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ウダウダ」を読んで その4

「そんな殺生な……」(p.191)
私にとっては、時代がかった表現である。

仏教用語の「生き物を殺す」から転じて、「残酷な、かわいそうな、むごい、ひどい」、さらに転じて大阪弁で「ワヤクチャ、理不尽な、あんまりといえばあんまりな」(p.191)

値切り倒して、商売人に「そんな殺生な」(p.192)
このあたりが私にとっては一昔感になるんだろう。

「セッショウ」は「セッショ」(p.191)という縮約形がある。
耳にしたことはある。

一方で、「意地わる、むごたらしい、ひどい」という意味の毒性は使わない。
これも「ドクショ」(p.191)となるらしいんだが、耳にしたことがない。


そら殺生やで、というのが、圧迫者に対する被圧迫者の抗議であるとすれば、第三者に向かっての客観的報告は、「往生しました」になる。(p.193)


人が亡くなった時に、往生したというのも、最近は使っていない。
あくまで私がという話。

一方で、立ち往生はたまに使ってる気がする。
山手線がちょっと止まったぐらいでは使わないが、特急で1時間以上なら使う。


「閉口する、困る」という意味では、大木こだまさんの「往生しまっせ」がすぐに浮かぶ。
「リンダ、困っちゃう」が「往生しまっせ」なら、腹を抱えて笑いそう。

「××もとうとう、銀行にソッポをむかれて往生した」(p.194)
終わったなあという感じで、死ぬの派生で伝わってくる。

女をくどいて、「ええかげんに往生しいな」(p.194)
覚悟せえやという意味だろうが、こちらは伝わってきにくいなあ。


「往生する、にはあきらめるというようなニュアンスもある。しかし、真実、うんざりした、というようなときには、うとてもうたといいますなあ」(p.195)


共通語での歌っては、大阪弁では「うとうて」。それの縮約形が「うとて」。
「悲鳴をあげる、降参、音をあげる」(p.195)という意味で使われる。

倒産の際には、往生したよりうとてしもたの方が緊迫感がある(p.195)とのこと。
このあたりのニュアンスも私には伝わってこない。

天寿を全うしたら「往生した」、自殺者は人生に「うとてしもた」。
この例でようやく理解できた気がする。



「せっしょう」のアクセントは、HLLL~HHLL。
「せっしょ」は、HLL~HHL。

「どくしょう」は内省がきかないんだが、LLLHか?
だから、「どくしょ」はLLH。

「往生」は、HLLL。
「往生した」は、HLLLHL。
「立ち往生」は、LLHLLL。

「うとて」は、HHH。
「うとてもうた」は、HHHHLL。
「うとてしもた」は、HHHHLL。


この章終わり。






2017年8月 5日 (土)

『大阪弁ちゃらんぽらん』「ウダウダ」を読んで その3

「すっかり」に似ている「すっくり」があるという。
「すっかり」より意味が強く、あらいざらい、根こそぎのような意味(p.189)があるらしい。

らしいと書いてる時点で言うまでもないが、使用語彙ではない。
理解できるかどうかは、以下の会話の引用で考えてみる。


京は三条の鴨川のお茶屋(中略)おかみさんが河原を見たら
「目ェの下にアベックがいやはって」
愛の行為をやったはるのが、
「すっくり、見えましたわ」(p.189)


頭にはてながとびかっている。
この「すっくり」は思わず「ホンマに大阪弁か」て聞いてしまうかもしれない。

なまじ共通語にもありそうな語形なんで、余計に。
一部始終という意味になるんだが、ここで「すっかり」があわないのは分かる。

「すっかり忘れていた」はOKだが、「すっくり忘れていた」はNG(p.189)。
こういう内省を示されると、この2つの語の用法が違うことが分かる。

「すっくり忘れた」ではなく、「ころッと忘れた(p.189)」。
これはさすがに私の世代でも使うし、もはや共通語ではないかと思う。

盗まれるときは「ころっと盗まれた」では、可愛すぎて使えない。
こういう時は「ごそっと盗まれた(p.190)」があう。

いずれも「根こそぎ」なのかもしれないが、「全部」だと範囲が広すぎる。
「全部」の多義性を分解する必要がある。

一部始終見えた ○すっくり ?すっかり
これは内省がきかないのだが、時間をふまえた全体ということか。

覚えておくべきことをを忘れた  ○ころっと ○すっかり ×すっくり
「すっかり忘れた」だが、私の内省だと「ころっと忘れてた」「ころっと忘れてしもた」で単純なタ形は無理。

根こそぎ盗まれた ○ごそっと ?ころっと ×すっかり、すっくり
金庫の中の金を自分で使い切ったら「すっかり」、全部盗まれたら「ごそっと」。

「ごそっと盗まれた」は、実際に大金を盗まれた時が基本だろう。
大した金もないのに「ごそっと」は見栄を張っているだけである。



「すっくり」のアクセントは、LLHL。
「すっかり」がLLHLなので、これと同じだと類推。

「ころっと」はHLLL。
「ごそっと」はLHLLあるいはLHHL。



その4につづく。




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